第二の道理(ベッコside)

「僕はラビーさんを愛しています、 この上なく」

「愛しているから何だと言うんだ」


ベッコとビターの口論は続いていた。


「愛している、 と言うのは知性ある僕達だけが持っている物です

愛は尊いと信じています」

「尊いから良いと言う訳ではない

私は君よりも長く生きているから尊い物が俗な物に駆逐される所を見て来た

英雄と称された男の堕落を見た

永遠の愛を誓い合った二人が破局を知っている

誰が頼んだ訳でも無く勝手に駆逐される

己の中の俗に尊い物が殺される

君が今ラビーを愛していても未来もラビーを愛しているとは限らない」

「論より証拠です、 二つ目の道理を見せます」

「二つ目・・・あぁ、 そう言えばそんな事を言っていたな・・・

その理屈とは何だ?」

「簡単な話です、 僕はもう言葉を尽くしました」

「・・・・・うん?」

「僕はラビーさんを愛しています」


ベッコは短剣を取り出して自分の腹に突き刺した!!


「なっ、 お前!?」

「っ!!」


ビターが慌てて駆け寄る前にベッコは自らの腹を裂いた!!

腸が飛び出す!!


「何をしている!!」

「さぁ叔父上・・・テンパリングしないと僕はこのまま死にますよ・・・」

「貴様ッ!!」


激昂するビターだったがベッコの言う通り

テンパリングしなければ助からない状況である。

ビターは回復魔法は使えないし予め短剣を準備しているベッコが

連れて来ている護衛も恐らく使えないだろう。

臓器の損傷を治す為にもテンパリングで死体との融合をしなければならない。

ベッコは事前に臓器の異常に対してテンパリングが使われた事を調べて知っていた為

こういう無茶を考え付いたのだった。


「愛、 はこんな事も出来ますよ・・・」

「黙ってろ!! くそ・・・この愚か者が・・・!!」


無茶をやらかしたとはいえ甥であり

ビターは腹まで裂いた子供を見捨てる程外道では無かった。


「そこまでするのならば良いだろう、 地獄を見せてやるよ!!」


ビターはベッコを抱えて屋敷の地下の死体安置所に走った。


「・・・・・彼ならば・・・多少は・・・」


ビターは早急に並べ立てられていた死体から一体見繕った。

その死体の名はグンナー・ヘグニ。

ビア帝国の十二魔家の一つヘグニ家の権力闘争から逃げて

カラメル王国に亡命した男である。

ビターは生前の彼と話した事があり、 彼ならば手心を加えてくれるかもしれない・・・

そう期待して禁忌の固有魔法【テンパリング】を発動するのだった。

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