公爵令嬢の嗜み

「マジか・・・大使館から出やがったぞ・・・」


大使館近くのマンションの一室に詰めている暗黒街の亜人達。

見張っていた亜人の一人がぽつりと呟いた。


「大使達が打って出て来たって事か、 ふふん面白い」


頭が鎌になっている亜人が鼻を鳴らして笑う。


「いや、 人間の女が柵を曲げて出て来やがった」

「大使の柵を!?」

「どんな怪力!?」

「多分魔法使い、 マヤの婆さんが最優先目標って言ってたラビーって奴だと思う」

「そうか、 なら話は単純だわなぁ!!」


マンションの一室から窓を突き破ってラビーの前に飛び降りる頭が破城槌になっている亜人。


「大人しくして貰うぜ!! ラビー!!」


発火し叫び声を上げて燃え尽きる亜人。


「・・・・・」


マンションの中の亜人は呆然とした。


「おいおいおいおいおい・・・アイツがあんな一瞬で・・・」

「ヤベェな・・・如何する?」


亜人の一人がマンションの一室からパイロンの頭を出して覗く。

そして燃え上がるパイロン。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「やべ、 水!! 水!!」


何とか消火される。


「聞け!!! 亜人達よ!!!」


ラビーが声を張り上げる、 叫びでは無く凛と通る声である。

指導者が兵隊を鼓舞するような品のある言葉である。


「齢18、 女の細腕なれど戦場を駆け数多の命を摘み取って来た!!!

私を断ち塞ごうとするのならば死を覚悟せよ!!!」


マンションの中の亜人達は身動きが取れなかった。

彼等の人生はあまり良い物では無かった。

暴力で築き上げてきたと言っても過言では無い。

ラビーが強いのは分かったが根本的に何か違う。

自分の為に戦う彼等と他者の為に戦おうとするラビーとでは勝負にすらならないだろう。


「ど、 如何する?」

「・・・・・大人しくしてよう」

「そうだな」


亜人達は部屋の中で震えて引っ込んだ。


「腰抜け共がっ!!」


ラビーはそう吐き捨ててツイストと走って行った。


「ラビー、 中々良かったぞ、 ちょっとドキドキした」

「ドキドキした・・・? 発声練習すれば誰でもあの位の事は喋れますよ

公爵令嬢の嗜みです」

「何と言うか女王様的な、 女騎士団長的な、 そういう雰囲気が出て俺は好きです」


ツイストはMなのか? と少し思うラビーだった。

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