ゾーンに入る

「こう、 こう、 こう、 こう、 こう」


次々と様々な方法で柵を熱したり冷やしたりするラビー。


「お、 おいラビー少し休んだ方が・・・」

「公爵、 止めなくて良いと思いますよ」


ゼロが止めようとするがツイストが制す。


「しかし明らかに様子がおかしい」

「確かに目がガンギマリっているし発汗も凄い状態ですが

問題は無いでしょう」

「問題大ありだろう・・・大丈夫なのか?」

「これは所謂ゾーン状態です」

「ぞーん?」


ゾーンとは集中力が非常に高まり周りの景色や音などが意識の外に排除され

自分の感覚だけが研ぎ澄まされ活動に没頭できる特殊な意識状態を指す。

取り組んでいることに没頭し驚異的な集中力で予想以上の結果を出すことが可能になる。


「つまり物凄い集中している、 と?」

「そうですね、 ラビー嬢は深海大戦でもゾーン状態に入り

活躍したと情報が入っています、 固有魔法は物凄いですが

それだけの女じゃないって事ですよ」

「そうなのか・・・しかしここまでの事が出来るとは・・・驚きだ

ラビーの魔法は凄まじいと言う事は知って居たが

魔力の量はそこまで高く無かった筈・・・

ここまで魔法を連発して良く持つな」

「えぇ・・・そうですね・・・魔法的な素質でしょうか」


否、 ゾーンに入れた事が重要なのである。

ラビーの魔力量は大した事は無いのは事実だがラビーが持つ潜在能力は凄まじい

その凄まじい潜在能力を100%を超えて発揮出来るゾーンに入れたと言う事が最重要なのだ。

ゾーンに入る事には超集中力が必要である。

その為には精神的な修行が必要である。


貴族令嬢だったラビーがそんな修行をしているのか?

否、 貴族令嬢だからこそ、 王子の婚約者だからこそ

民を、 国を背負うその重責を10年以上も背負い続けた。

そんな重責を背負い続けたらどうなるのか?

潰れるか、 放り出すか、 それに耐える強さを持つか。

ラビーは国を背負う王の伴侶、 生半な貴族令嬢では無いのだ。


強靭な精神力を持っているからこそ、 ちゃんと自分の状況を理解し

そして焦らないのだ。


柵を開けなければ巾木達が危ない。


その状況を意識し焦らず行動出来る、 常人ならば焦ってゾーンには入れないだろう。

三島の人生観を持っているがラビーとして歩んだ人生も彼女の中で生きているのだ。

その人生を歩ませたのはゼロだった。

少女に重責を被せたのは親として如何なのか?とも思うが

もしもラビーがサンライズの婚約者で無ければ深海大戦にラビーは参加せず

サークルランド全体の歴史が変わっていただろう。

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