助走をつけている

ラビーは大使館の周囲に張り巡らされた能力で構成された柵を見渡していた。

方角や高さによって変化は有るのか?

ツイストにも協力して貰い、 二か所での攻撃に対処出来るか?

魔法によってどう動くのか?

様々な観察を行っていた。


途中で柵の上に登る、 と言う事もしてみたが

柵が伸びて高くなり出られない。


「見ている此方が既に疲れ始めて来たぞ・・・」


3時間程が経過してゼロが呟いた。


「休んで貰っても構いませんよ」

「いや、 ここの方が安全そうだからな、 待たせて貰おう」

「そうですか」


作業を再開するラビー。


「・・・ツイスト殿下、 私は魔法は門外漢です

現状はどうなっています?」

「悪くは無い、 例えるならば・・・

そうですな、 街中で良い女を見かけた時、 と言う所でしょうか」

「・・・・・それは如何言う状況ですかな?」


意味不明な比喩に困惑するゼロ。


「糸口は見えている、 と言う感じでしょうか

先に進んでいない様に見えていますがとっかかりは見えている印象を受けますね」

「そうですか・・・」


ラビーは柵を撫で回す。


「・・・・・魔法、 と言うよりは通常物質に近い・・・

ならば物理的に壊した方が速い?」


ラビーが自身の魔法で柵を熱する。

しかし柵は温まらない。


「ならばこう」


ラビーは柵を円形に凍らせた。

そして円形の中心を熱する、 周囲を冷却しつつ真ん中から熱が逃げない様に熱し

物体として融解させようと試みる、 が


「・・・・・ラビー、 お前は真正面に居るから気が付かないかもしれんが・・・

横から見ると外側伸びてるぞ」

「!?」


ゼロの指摘の通り柵が奥に伸びて熱を逃がしている。


「物理破壊も厳しいか・・・」

「ならばやはり魔術的に破壊、 と言う事か?」

「厳しいかもしれない、 だけども破れないと言う事は無い筈ですよ」

「何故?」

「亜人と言えども生き物ならば同じ生き物に破壊出来ない道理は無い」

「なるほど・・・」

「しかしながらラビー、 少し婚を詰め過ぎじゃないのか?

もう3時間は経っているぞ?」

「ならば尚更急がないといけませんね」


そう言って再び柵に集中し始めるラビー。


「大丈夫なのか?」

「いや途中で休憩すると集中が切れるかもしれません」

「そうか・・・」

「そう思い悩まずに・・・葉巻でも如何です?」

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