閑話 愚行権

食べ終わった食器を洗うラビーとでぶ妖精達。

普段はでぶ妖精に食器を洗わせるが鍋は重いので気遣ってラビーが洗う。


「ラビー嬢」

「巾木さん? どうかしました?」


ラビーの後ろに立つ巾木。


「やはり貴女、 王国に戻りませんか?

飲食店の店長に収まる人じゃないでしょう」

「私は今の生活でも満足しているんですけど?」

「ですが・・・あまりにも勿体無い

貴女程の逸材は滅多に見ない、 私の人生でも3,4回位しか居ない逸材ですよ」

「確かに私は勿体ない事をしている馬鹿かもしれませんが

馬鹿をしていても良いじゃ無いですか」

「愚行権、 か」


愚行権とは他人に迷惑をかけない限り、 何をしても良いだろうと言う考え方である。


「私はその言い方、 好きじゃ無いですけどね

馬鹿を頭良さそうに言うのは本当に馬鹿っぽいじゃないですか」

「自分が馬鹿をやっている自覚は有るのですか?」

「貴族として暮らすのが賢い生き方なら馬鹿で良いです

貴族としての生き方は正直息が詰まります」

「気持ちは分からんでもないが・・・それでもと私は思う」

「いやいや、 巾木さん、 貴方は私に如何こう言える立場では無いと思いますよ?」


ぴっ、 と巾木を指差すラビー。


「どういう事だ?」

「他国の貴族を助けようと傭兵を雇って他国に来る

これって傍から見れば馬鹿に見えますよ?」

「・・・まぁ・・・確かに・・・

だがしかし私は君を助けたかったから如何でも良いさ」

「そう言う事です、 生きると言う事は馬鹿をやる事なのかもしれませんね」

「それは極論だが・・・まぁ良いさ

楽しそうに生きているのだから良い・・・とは言え直ぐに戻る訳にも行かない」

「え?」


巾木は真剣な表情になった。


「亜人だよ、 私は長い事生きているがあんな種族は見た事が無い

如何にかして国家間での対話を望む、 でなければ将来的に問題が起こる事は眼に見えている」

「それは・・・如何でしょうか、 亜人は人間との関りを断っている様に見えます

対話は難しいでしょう」

「知った以上は何もしない訳には行かないだろう」

「そうでしょうか・・・」

「おでぶちゃんとも対話しようにょー」


巾木の裾をひっぱるでぶ妖精。


「食べ物を強請ったりするのは対話とは言わない」

「にょーん・・・対話は平行線にょ・・・かなちい」

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