閑話 こんなに近く我々の想いは一つなのにどうしてこんなにも離れているのか

大量の薫製機に囲まれて二人のでぶ妖精が佇む。

一人は野良でぶ妖精。

もう一人はレストランスコヴィル勤務でぶ妖精。

野良でぶ妖精が重い口を開いた。


「どうしても駄目なのかにょ?」


野良でぶ妖精がレストランスコヴィル勤務でぶ妖精に問う。


「駄目なにょ」

「こんなに一杯あるにょに?」

「そうなにょ」

「ちょっと分けて欲しいにょ」

「気持ちは分かるにょ・・・でも駄目なにょ・・・」


滂沱の涙を流すレストランスコヴィル勤務でぶ妖精。


「気持ちは痛い程分かる・・・でも・・・店長の為なにょ・・・!!」

「店長がそんなに大事かにょ」

「店長は食べ物をくれる!!」

「でも今はお預けされてるにょ」

「でも店長は食べ物をくれるにょ・・・!!」


野良でぶ妖精はぽんとレストランスコヴィル勤務でぶ妖精の頭を撫でた。


「こうなったら店長に直訴するにょ・・・」









「という事で燻製が食べたいにょー」

「ちょーだい」

「何か真面目そうな事をしているなと思ったらそんなオチかい」


軽くずっこけるラビー。


「でも店長、 物凄い沢山燻製箱並べて燻製作って居るにょ」

「正直、 あんなに一杯燻製箱が有ったとは私も意外だったよ

でも外で作っているのは冷燻で商談用の薫製なの

悪いけど我慢して頂戴」

「そんにゃー・・・このままじゃあ燻製を巡って

でぶ妖精同士で戦わなきゃいけないにょー」


えーんえーんと無くでぶ妖精達。


「分かった分かった、 これでも食べなさい」


そう言ってラビーが出したのはナッツである。

アーモンドやカシューナッツ、 落花生も有る。


「にょーお豆さんー?」

「にょーん・・・」


ぽりぽりと食べ始めるでぶ妖精達。


「にょー、 何か不思議な味ー」

「にょんにょん♪ なんだろー」

「これはナッツの薫製よ」

「ほへー、 凄いにょー、 何時の間に燻製したにょー?」

「昨日燻製したの、 薫製したら直ぐに食べられるけど

一日置いた方が美味しいからね」

「すごーい」


ぽりぽりと食べるでぶ妖精達。

食べ進めてやがて最後の一個に。


「・・・・・」

「・・・・・」


最後のナッツを互いにつかむでぶ妖精達。


言葉は要らない。


「にょおおおおおおおおおおお」

「にょおおおおおおおおおおお」


互いに引っ張り合うでぶ妖精達。

こんなに近く同じ物を求めているのにどうしてこんなにも離れているのか・・・


「はいはい、 まだ有るから食べなー」

「「わぁい」」

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