閑話 ボロ馬車の夜

サンライズ一行が馬車から降りて休息を取る。


「ここら辺は山賊とかそういうのは無い所なんで安心して寝れますよ」

「御者、 だからと言って眠りこける訳には行かん

交代して見張りをしよう」

「えー、 その分のお代を頂きますよぉ?」

「ちぃ!! なら分かった、 さっさと寝ろ!!」

「はーい」


スノーが御者にそう言って御者が眠る。


「アスパル、 大丈夫か?」

「傷は大丈夫だけど気持ち悪い・・・」

「車酔いだな、 すまない」

「それだけじゃない・・・何もかも・・・髪の毛べたべた

体洗いたい・・・顔も・・・もうイヤァ・・・」


涙を流すアスパル。


「ウォームは湯沸かしの魔法使いも居たから体も拭けたが・・・

おのれ・・・王族にこんな仕打ちをするとは・・・」

「殿下、 貴方とバレずに移動する事を中心に考えていたのでしょうがないですよ」


ウルがサンライズを宥める。


「ウル、 お前は確か水属性の魔法使いだった筈

生活用水とか出せるんじゃないのか?」

「それは厳しいですよ」

「何故だ?」

「出せますが飲料水としての運用を考えているので

水が冷たいので風邪をひいてしまいます、 それに体を洗う為の洗剤も無いですし」

「使えんな・・・」


イラッとするウル。


「殿下が準備すれば良かったんですよ」

「何だと!?」

「止めて下さい二人共!!」


喧嘩になりそうな二人を止めるスノー。


「アスパルが悲しむでしょう」

「・・・それもそうだな、 すまないウル」

「いえ、 こちらも言い過ぎました」

「御者、 何処かの街に寄って行く事は出来ないか? 風呂に入りたい」

「風呂ですかい? 適当な川か湖で体洗うとかでは駄目ですかい?」

「如何するアスパル?」

「そんな所で体を洗える訳無いでしょう!! 常識で考えてよ!!」

「そうだぞスノー、 ちゃんとした風呂に入らせるべきだ」

「その通りだ」


責められるスノー。


「ですが街中に出るとバレる危険性が有りますよ?」

「う・・・何とか誤魔化すしかあるまい・・・」

「アンタ等有名人なのか?」


御者が尋ねる。


「・・・・・」

「そんな怖い顔するな、 こう見えてもプロだ、 客を売ったりはしない」

「プロなのに馬車はボロいのか」

「あぁ、 金は無いけどプライドは有るぜ」

「やなプライドだな・・・」


そんな事を言いながら夜は更けて行った。

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