閑話 深く広い海の底で

サークルランド沖のとある海溝の底にて半魚人達が集まっている。


「・・・・・」


半魚人の一人、 白い肌のイカの様な人の様な意匠の半魚人が佇んでいる。

通称イカ女、 半魚人の中でも高い地位に居る半魚人である。


「タコ娘がやられた様だな」


イカ女は発達した脳からテレパシーの様な物が仕える特性が有る。

それを利用して状況を把握出来る。


「それは驚きだな」

「ふむ・・・」

「意外だな」


他の高位の半魚人達もその場で情報を共有する。

半魚人達は水中でも会話が可能なのでこれ位の事は簡単である。


「ちょ、 ちょっと!! 仲間が死んだのに淡泊過ぎませんか!?

もっとリアクション有るでしょう!?」


半魚人の中で我々がイメージする人魚の様な半魚人が声を挙げる。


「君は相変わらずの過剰反応だな」

「その通り、 君は人間に近すぎると思うよ」

「君の考えを我々に押し付けないでほしい」

「・・・・・」


絶句する人魚。


「人魚よ、 君は少し自己中心的過ぎる」

「な、 他者を思いやる事の何処が自己中心的だと!?」

「他者を思いやるのは勝手だがそれを他者にも強制するのは君の悪い癖だ」

「っ!!」


人魚はその場を泳いで去った。


「全く、 また癇癪か、 やってられんな」

「まぁ良いんじゃないんです? 彼女は下半身が尾鰭だから

水中では比類なきスピードで泳げる代わりに地上には出て来れない

地上での作戦行動にはついて行けないし、 ここに居る意味が分からない」

「それもそうね、 次の手を考えなければいけないが・・・

大瀑布からのルートが危険となると如何行くか悩ましいな・・・」


考え込む半魚人達。


「下手な考え休むに似たりだ」


すっくと立ちあがるエリート半魚人の一人。


「魚でも食いに行こう」

「このタイミングで?」

「魚にはDHAと言う成分が含まれていて頭が良くなるらしい

ならば魚を喰えば良いアイデアが生まれる筈だ」

「その話、 誰から聞いた?」

「タツノオトシゴ老からだ」

「彼は気が触れているからな・・・確かに有用な事も言うが信用に欠ける・・・」

「まぁここでグダグダやっていても仕方ない、 狩りに行こうか」

「あぁ」


半魚人達が魚を食べに向かった。

とは言え食事では無く狩りである。

その場で魚を喰らうのだ、 半魚人には料理と言う概念は無い。

貯蓄と言う概念も無い、 海は広大なのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る