相手は死ぬ

鯨の魚人が暴れている。

タコ娘に倣い鯨野郎と呼称しよう。

鯨野郎は凄まじい勢いで暴れ回っていた。

家を破壊して瓦礫を作り投げる為だ。

そこに走る勲章の騎士。


「一人だけ? ハッ!!」


鯨野郎が嘲笑する。

赤い魔女なら兎も角たった一人の騎士に負ける道理は無い。

鯨野郎は瓦礫を投げる。

勲章の騎士に瓦礫が覆い被さるがぱっ、 と瓦礫が払われる。


「力は強い様だな・・・」

「そうだな、 お前如きでは如何にもならん力だ」


勲章の騎士がつかつかと鯨野郎に近付く。


「・・・・・馬鹿かお前」


鯨野郎が勲章の騎士に殴りかかる。

しかし勲章の騎士は片手を前に突き出してその拳を止めた。


「なっ!? と、 止まった!? お、 俺の拳が!? 腕一本で!?」


あの氷原を砕いたパワーが通じない事に焦る鯨野郎。


「馬鹿が、 良く見ろ」

「何・・・!?」


鯨野郎の拳は勲章の騎士の手に触れていない。

一体何故?

答えは単純である。

勲章の騎士の能力は手が汚れない能力である。

字面は大した事の無い力に思える。

しかし実態はとんでもない能力である。


あらゆる物は勲章の騎士の手に触れられなくなると言う能力である。

剣でも矢でも拳でも炎でも勲章の騎士の手には触れられない。

全て直前で止められる。


「ぐ、 うおおおおおおおおおおおおおお!!」


鯨野郎は腕を組んで叩き落とすダブルスレッジハンマーを勲章の騎士に繰り出す。

しかし勲章の騎士は腕を上に突き出すだけである。

圧倒的質量、 いや概念にぶつかっているのだ。

鉄を殴れば腕が痛む様に全力で拳を繰り出した鯨野郎の両腕は破壊された。


「ぐああああああああああああああああ!!」

「終わりだ」


勲章の騎士は鯨野郎の背中に回り込んで拳を叩き込む。

当然ながら勲章の騎士の拳には触れない、 故に鯨野郎は容易く転倒する。

そして勲章の騎士は鯨野郎の脊髄に向かって拳を叩き込む。

無論何も触れられない、 拳から全てが離れていく。

そんな物が脊髄に向かえばどうなるか?


「ぐ・・・・・あ・・・」


答えは一つ、 相手は死ぬ。

鯨野郎は訳も分からず絶命した。


「さてと、 こっちは終わったが向こうは如何だ?」


勲章の騎士が感慨無さそうに言う。

勲章の騎士にとっては500年以上続けて来た事なのだ。

感慨が沸くはずも無い。

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