アスパルは自分を憂う(アスパルside)

顔中に針で刺される激痛に苦しみながらアスパルは思っていた

何で自分がこんな事になっているのかと。


アスパルの前世は普通の主婦だった。

名前は忘れてしまった、 平凡で没個性な名前だったのだ。

普通に生まれ育って、 普通に学校に通って、 普通に就職して

普通にお見合い結婚して、 普通に子供を産んで、 普通に育児していて

目に見える不運も無ければ目に見えた幸運も無い。

そんなつまらない女だった。


趣味と言えばゲームにネットサーフィンだった。

貧乏でも無ければ裕福でも無い家柄で

特に美容や装飾に興味もない、 普通の主婦だったのでそれ位しかやる事が無い。

プレイしていたゲームの中の一つ『スイーツキングダム』

その世界のヒロインに転生した。

ネット小説でも転生と言うのは在り来たりな題材で自然に受け入れられた。

しかしスイーツキングダムよりももっと好きなゲームも有ったし

其方の方が良かったと思った。

スイーツキングダムは当然の様に知らない設定や説明されない用語も出て来るのだ。


しかもスイーツキングダムはマルチエンディングを採用していたが

実際に自分が人生を歩むとしたら辛いルートが幾つも有った。

自分の最押しのサンライズ覚醒ルートには

深海戦争に従軍しなければならない、 流石に戦争に参加する勇気は無い。

深海戦争に参加しなければかなりのルートが閉ざされる。

深海戦争に参加せずに自分の理想のルートはハーレムエンディングであった。

ハーレムエンディングは恐ろしく難易度が高くやろうとしても出来る物ではない。

しかし自分の人生がかかっているのだ、 ラビーに殺される危険性も有るかもしれないが

将来は王国の王妃にハーレムメンバーとの生活が待っている。

それならば挑戦するしかない!! とハーレムエンディング目指して進んで来た。


しかしこれは何だ? 何でこんな自分が苦しまなければならない?

聖痕の発現? 何だそれは? そんな設定自分は知らないぞ?

こんな激痛で苦しむのを自分は知らない

何でこんなに苦しい思いをしなければならない!!


ラビーを追放してやっと理想のエンディングを迎えられると思った矢先にこれである

微妙な差異は前から感じていたがあまりにも可笑しい、 一体何が起きている!?

聖痕の激痛に耐えながら理不尽に思うアスパルであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る