このゲームは参加者に個別に与えられた【固有ヒント】が【ブービートラップ】を特定する直接的な材料になる。言い換えてしまえば、他の材料をあてにすることはできない。なぜなら、誰が【ブービートラップ】なのかは、実の【ブービートラップ】本人でも知らないからだ。仕草や言動などから【ブービートラップ】の正体は暴けない。あくまでも【固有ヒント】を頼りにするしかないのだ。


 すでに二人は【固有ヒント】を共有しているようで、やり方を教えてもらいながら【固有ヒント】を三人で共有した。ほとんどが【?】で埋まっているヒント一覧に、水落と春日のヒントが追加される。となると、二人のSGTには自分の【固有ヒント】が追加されたことになるのだろう。


「ふむ、これまた面白いヒントだな――。そして、このヒントの真偽によっては、大きく状況が変わってくる」


 春日がSGTを眺めながら呟く。確かに、大きく状況は変わるだろう。


 ――ヒント【R】 【ブービートラップ】に与えられた【固有ヒント】は本物である。


「これが本物か偽物かによって、誰が【ブービートラップ】なのか大きく変わってくるってことか――」


 水落と春日の【固有ヒント】は、一方は【ブービートラップ】が男性であると示し、またもう一方は【ブービートラップ】が女性であると示している。確か【固有ヒント】には偽物も混じっているとのことだが、この時点で水落と春日のどちらかのカードは偽物だ。そして、これ二人の【固有ヒント】もまた、どちらが本物かによって【ブービートラップ】候補が大きく変わってしまうものだった。


「あぁ、ただ現状ではどの【固有ヒント】が本物なのか判別する手段がない。まぁ、こうして【固有ヒント】を集めていくうちに、自然と【ブービートラップ】が絞られていく仕様なのだろうがな」


 三人の【固有ヒント】だけではどうにもならないようだった。とりあえず、他の参加者……プレイヤーを探し出し、ひとつでも多くの【固有ヒント】を集めるしかなさそうだ。水落のヒントと春日のヒント、そして自分のヒントを眺めてみるが、しかしどれが本物で、どれが偽物なのかなど分かるはずがない。


「とにかく、今後の方針を今から決めよう。時間は限られているし、効率的に他のプレイヤーと接触するためには、ある程度の効率性が求められるだろうから」


 水落と春日はその意見に大きく頷いてくれた。それと同時に、水落のショルダーバックにつけられた腕時計が、小さく電子音をひとつだけ鳴らしたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る