第31話 傘
じゃあ、10億貸してくれるか?
私は答えられなかった。貸してくれないなら、これ以上聞くな。
後から教えてくれたのだが、彼が経営している会社のうちの一つは、コロナ禍で業務が止まっていて借り入れをしていたが直ぐに10億用意しなくてはならなくなったのだ。
いくら他にお金があっても自分個人からや、他の会社からの資金を移せない為難儀していたようだった。
資金を用意する方法を模索していた。
その話をしてきた相手は、県内では彼が大口顧客であり、十数年間に渡り常に銀行優先で話を進めてきていたのにこの様な事になったと。
晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘をとりあげる。
正に文字通りだった。
自分の人生で本当にその話を目の当たりにするなんて思ってもみなかった。
彼が大変な時に何も出来ない自分が辛かった。昔、彼の家族が借金があった時に周りは心配したり気にかけたりしていたが彼は同情するなら金をくれ。可哀想だねなんて誰でも言える、こっちからしたらいい迷惑だと。その話を聞いていたので私は、余計な事は言わないと決めた。
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