第27話 授与式
頭の中にファンファーレの音がこだましていた。
地面に寝転がって空を見上げると、そこには大きくビクトリーの文字が浮かんでいる。
『やったね! 優勝だよ、優勝!』
ヒナの声が響いてくるけど、どこか遠くの世界の言葉みたいだった。
勝っちゃった……。
「本当に勝てたんだよね」
『うん! まさかチーターをやっつけちゃうなんてね』
うわぁ、なんだかすごい達成感。
ビクトリーの文字をそっと指でなぞってみる。
このゲームって確か千人で戦ってたんだよね?
千人の中の一番ってこと?
ゆっくりと、胸に熱いものがこみあげてきた。
ゲームを始めたばかりの頃は、私が思っていた魔法少女とは全然違うと思ったけど、やっていくうちに楽しくなって、自分なりの戦い方が見つかって……。
うん、やっぱりゲームって楽しいね。
視界がゆっくりと白に染まっていく。
まぶしさに目を閉じると、気が付けば見たことのない場所に移動していた。
「あれ? ここってどこ?」
足元には赤い絨毯。その先には二つの立派な椅子が並べられている。
そして――。
ドッっと歓声が沸き上がった。
空気が震えるような歓声に辺りを見渡すと、広間いっぱいにたくさんのプレイヤーが集まっている。
「今回の試合に参加してた人たちだよ」
声のほうへ振り替えると、隣にヒナが立っていた。
「あれ、ヒナ? 死んだはずじゃ?」
「人をリアルに死んだみたいに言わないでよ。ゲームに勝ったんだから復活するって。それより、これから授与式だよ! ホラ胸張って!」
周りに目を向ける。
歓声を上げた人たちがそこに並んでいた。
よく見るとサンディーさんをはじめ、見覚えのある顔も並んでいる。
「お嬢ちゃん! よくあのチーターをぶっ飛ばしてくれたな! 最高だったぜ!」
「熱い試合だったよ! っていうか初心者ってマジ?」
「かっこよかったです! 鍋蓋最高でした!」
いやいや、さすがに恥ずかしい。
ヒナは胸を張れって言ったけど、そんな余裕はこれっぽっちもない!
そしてうつむいていると、ヒナが腕を引っ張ってくれた。
「ほらいくよ。主役なんだから前向いて」
「う、うん」
二人でゆっくりと赤い絨毯の上を歩く。
段差を上り椅子に着席すると、どこからともなく表れた兵士が手に持った勲章を首にかけてくれた。
「これが優勝の証だよ! あとで部屋に飾らないとね!」
「これが……」
首にかけられた勲章を手に取って、眺めてみる。
「ヒナ……私このゲームハマっちゃったかも」
「ふっふっふ、ようこそ沼の世界へ」
「ぬ、沼? なに、沼って!?」
「一度ハマると抜け出せないとか、底が深くて見えないとかそんな意味」
「な、なんだか怖くない?」
「大丈夫だって、私がいろいろ教えてあげるからさ」
そして私はこの日初めて、
ニカッと笑うヒナを見習って、勇気を出してみんなに笑顔を向ける。
歓声が今まで以上に大きくなると、私の視界はゆっくりと真っ白になっていった。
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