第5話 魔法戦!
大きな爆発音に目を向けると、すぐそばにあった家屋が土煙を上げていた。
そして煙の中から一人の女の子が飛び出していき、その先に爆発をおこした張本人らしい魔法少女が空の上に浮かんでいた。
ま、魔法少女同士の戦いだ!
すごいすごい! アニメの中だけだったシーンが目の前で再現されてる!
「かっこいい! ねえ、すごいよヒナ!」
「いやいや、感心してる場合じゃないってば! 逃げるよ!」
「え、見ていかないの?」
「戦いに巻き込まれたらアウトだからね」
そっか、このゲームは最後に生き残った人が優勝だから、あの人たちから見れば私たちも敵ってことになるんだ。
「もう少し装備が揃ってたら戦うのもありなんだけど、さすがに今はキツイかな
「確かに……」
さっきまで私にゲームの説明をしていたせいで、本来集めるべきだったカードを集められていない。
特にヒナはまだ一枚もカードを持ってない状況だ。
今戦いに巻き込まれたらひとたまりもないと思う。
そしてヒナと私が隙を見て飛び出した瞬間、その方向から別の人影が現れた。
「ってヤバ。こっちからも来てる! シズネ、隠れて!」
慌てて一番近くの家へと逃げ込む私たち。
逃げようとした先にいた魔法少女は、さっき爆発を起こした人の仲間みたいで、二人がかりで一人の敵を倒そうとしているみたいだった。
「まだ私たちは気付かれてないはず。どこかに行ってくれればいいんだけど……
ヒナの言葉を聞きながら、私も祈るように戦闘を眺める。
せっかくゲームのルールがわかって、楽しくなってきたのにここで負けて終わるのは悔しいし、なによりヒナと一緒に戦ってみたい。
「あれ? そういえば、やられてる方の子って仲間はいないのかな? 一人でゲームを始めたとか?」
「たぶん、先に落とされたんじゃないかな。ペアルールのここに一人で乗り込むこともできるけど、基本的にはペアのルールにはペアで来るはずだし」
そんな会話をしていると、窮地にたたされた魔法少女が動いた。
ステッキに何かのカードをセットしたと思ったら、足元に大きな羽が出現し、空へと浮かんでいく。
「あれは【
「ってことは逃げるつもりかな?」
「そうだと思うけど、あれじゃダメだね」
女の子が空へと浮かんでいったところへ、私たちの側にいた魔法少女が魔法弾を放ち撃ち落とす。
空には体を隠せるようなものはない。つまり攻撃をよける手段がないってことなんだ。
「あの状況なら目の前の敵を倒しにいくか、周りの建物を使って逃げるのが正解だよ」
冷静なヒナの解説を聞きながら、撃ち落されて落ちてくる女の子に視線を向ける。
「あれって痛くないよね?」
「大丈夫大丈夫。注射ぐらいの痛さだって」
「それって結構痛いよ!?」
うぅ……こんなに激しいゲームだったなんて……。
「それよりシズネ。これちょっとやばいかも」
「どうしたの?」
「たぶん私たち見つかるよ。戦闘は避けられない」
「え?」
撃ち落された女の子に向けて、さらに大玉の魔法弾が発射された。
それは私たちが戦闘に気が付くきっかけとなったものと同じ爆発音を響かせながら、落ちてきた女の子に止めを刺した。
女の子のいた場所にはデフォルメされたかわいいお墓がたち、プレイヤーの排除を知らせる。
ただ、問題はそこじゃなかった。
「あ、あの、どうも」
「いやいや、挨拶してる場合じゃないって」
私たちのすぐ近くで、魔法弾がさく裂した結果、身を隠していた建物は吹き飛び、発見されてしまったのだった。
目が合うこと数秒。
向こうは突然現れた私たちに驚いたのか、一瞬固まった後、ステッキをこちらに向けてきた。
これってあれだよね。絶体絶命ってやつ! まだゲーム始めたばっかりなんですけど!?
「コッチ!!」
ヒナに引っ張られるように走り出す。
壁を使いながら、魔法弾を回避していく。
「さすがに初プレイで出オチはかわいそうだよね……。よし、ちょっと頑張ってみますか!」
そして、ヒナの目が鋭いものに変わる。
「シズネ、【
「えっと、【
ステッキから出てきたカードをヒナに渡す。
「よし、これでなんとかしてみるよ。シズネはここに隠れてて。私がやっつけてくるから!」
そしてヒナは物陰から飛び出していった。
◆◆◆◆◆
「【
ヒナが飛び出していくと同時に、激戦が始まった。
「敵は二人! 気を付けて!」
「わかった。私が食い止める!!」
二人の魔法少女は短い意思疎通の後、動き始めた。
一人はヒナを魔法弾で撃ち抜こうと攻撃をはじめ、もう一人はヒナから距離を取るように下がっていく。
ヒナは繰り出される魔法弾を、避けたり壁にぶつけながらかいくぐると、敵へ向かって突っ込んでいった。
「いや~、装備も少ないのに仲間を守るため戦うのは、魔法少女ポイントが高いですね~」
さっきまで静かだったパルちゃんが、出てきて解説してくれる。
っていうか、魔法少女ポイントってなによ……。
「基本的に魔法少女は、二つの魔法を装備して戦います。それが攻撃魔法と補助魔法です。攻撃魔法は使用することで【
二つの魔法。
確かに相手は空に浮かびながら、爆発する魔法を使っていた。
でも、そうなると今のヒナは攻撃魔法しかもっていないことになる。
装備の選択肢がなく、私は戦闘に参加もできない。そのうえ、魔法が一つないなんて。
もしかして、すっごくピンチなんじゃないの?
「えっと、敵の二人が持ってる魔法はどんなものなの?」
「攻撃用の魔法は【
言われてみてみると、確かにヒナから距離をとった魔法少女はステッキではなく本を持っていた。
武器の見た目から相手の攻撃方法を予想できるってわけだ。
「【
「うわ~、なんだかすごく強そう……」
「【
そんな説明を聞きながら、ヒナへと視線を向ける。
【
「うわぁ、すごい……」
戦況は圧倒的に不利なはずなのに、私の目にはヒナが押しているように見えた。
攻撃を相手に当てる回数がヒナのほうがあきらかに多いからだ。
どんな逆境でも立ち向かう、私のあこがれる魔法少女みたいに戦うヒナが少しだけかっこよく見えた。
「すごいね。コレなら勝っちゃうかも」
「いえ、大きな問題があります。たぶん、ヒナさんもわかってますよ」
そして、ヒナがステッキを振るうのと同時に発射されていた、魔法の弾が突然でなくなった。
「あ、あれ?」
「マナが尽きましたね。攻撃魔法や補助魔法を使うのにはマナが必要です。時間経過で回復しますが、基本的にはフィールド内に落ちている宝石を使い回復しないといけません」「で、でもまだ戦い始めたばっかりだよ!」
「ゲーム開始直後は、マナの残量が少ないんです。本来は探索を行い初めにマナを補充するのですが、探索不足で確保できていなかったんですね」
「そんな! それじゃあもう戦えないってこと?」
やっぱり勝てないの?
そう思っていると、ヒナはステッキを振ることをやめて、そのまま突っ込んでいく。
そして――。
「うおりゃー!」
――ポカッ!
コミカルな効果音と一緒に相手の魔法少女を殴りつけていた。
「え?」
「マナがなくなったときにできる攻撃はあれくらいです。一度効果を発動するとマナ消費なしで使用し続けられる、近接攻撃用の魔法もありますが、現状ヒナさんは所持していませんからね」
しかもその一撃を最後に相手の魔法少女は、光となってかわいいお墓に姿を変えた。
っていうか、本当に一人やっつけちゃった!
すごい、すごい! 武器も弱いしアイテムもない状況から倒しちゃうなんて!
「マスター、油断は禁物です。『油断した魔法少女から倒される』という言葉がありますからね!」
「なんてピンポイントな言葉……それより、このままじゃまずいよね」
【
さっきの【
「あれは【
「いやいやオススメとか聞いてる場合じゃないよ! これまずいよね!?」
このままだとヒナがやられちゃう。
するとヒナは走り出した。その方向は初めに倒された魔法少女がいる方向。
そしてお墓に手を添えると、その手の中に宝石が握られていた。
「あれってなにしてるの?」
「倒された魔法少女のお墓にアクセスすることで、持っていたアイテムを回収することができます」
そしてヒナが手に持っていた宝石を砕いたところで、空高くにいる魔法少女のステッキが振るわれた。
「【
ヒナの足元に大きな羽が表れ、ステッキを振るう相手へ向かって突っ込んでいく。
次の瞬間――空中で魔法が炸裂する音が響き渡った。
「ヒナああああああああああああああああ!」
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