「辻沢日記 6」(雨の衝突)

 やっと午後の講義終わった。目を開けてるの辛かった。


このあと暇だな。出発まで3時間もある。


そうだ資料集めしにゼミ室に行こう。誰かいるかな。


 外、雨降ってるしー。傘持ってない。


しょうがない校舎の廂の下を伝って行こう。


煉瓦の壁が雨に濡れて土の匂いする。


蔦。蔦。蔦で軒下は人を寄せ付けないよ。


それでも強行突破。やっば、雫で濡れた。何してんだか。


おっと、ここは飛び地か。一端着地!


雨に打たれる。


でも走らなーい。走っても走らなくっても濡れる量は一緒だって最近ネットで知ったから。


やっってはみたけど走ったほうが濡れなさそう。あの情報ガセ?


こっちの校舎の軒下は狭くて結構スリルがあるな。


あの角をまがれば虹が見える? なんてね。


痛った、人にぶつかった。


出合い頭って言っても頭で当たるわけじゃないのね。


相手の人が咄嗟に手を伸ばしてくれて落ちずに済んだ。


握った手が温かい。


「ゴメンなさい。同じ考えの人」


 聞き覚えのある声。


「あれ? フジノさん? つい今しがたゼミ室で」


 鞠野フスキじゃん。


「鞠野先生。あたしコミヤです」


 いつも間違う。


いくら双子だからってゼミ室にミユキがいたんなら、こっちは小宮ミユウだって分かるでしょ。


ミユキ悲しむよ。


それともミユキのことばっか考えてる?


「ごめんごめん。気を付けて歩きなさい」


 お互い様でしょ。


どっちかっていうと鞠野フスキのほうがぼうっとしてた感あり。


てか、この人常にぼうっとしてないか?


「あ、ノタさんのことよろしく頼むね。調査の準備とか、いろいろサポートしてあげてください」


 だから、クロエの担当はミユキだから。


どうせゼミ室でもその話してたんでしょうに。


あたしと会うと必ず、ミユキとの会話リピートするのやめてくれません?


「ところで先生。そこちょっと避けてください。通れませんから」


 鞠野フスキは狭い足場の前後を確認すると、


「そうか。これは困ったね。下に降りるのも癪に障るし。じゃあこうしよう」


 キャー。ちょっと、何するんですか? こんなところで。


先生と抱きあってたってSNSに晒されたらどーするんです?


「じゃあ」


 って、行っちゃった…。


なんでドキドキしてるんだろ、あたし。


 守衛さんに鍵貰おうと思ったら、ゼミ室開いてるって。


ミユキまだいるのかな。


失礼しまーす。なんだクロエか。


「あ、ミヤミユ。待ってたー」


 約束してないし。


ユウと同じ顔して。ユウもこんなふうに笑ってくれたらな。


 クロエとはいつもゲードル話で盛り上がる。


共通の押しがいるわけではないけど、バトロワゲームのライブビューイング一緒に観に行ったり、円盤の貸し借りしたりする。


今度ライヴに行こうよって言いあってるけど、お互いガクギョウに忙しくってまだ行けてない。


今日もそのことが話題になって、クロエがREGIN♡IN♡BLOODSのライヴに行きたかったって言った。


でも、それはもう無理。RIBのライブは2度とない。


何故なら半年前、飛行機事故で主要メンバーが亡くなって事実上の解散状態たから。


 今日はいつもの倍は疲れた。


資料集めなんかひとっつも出来なかった。


しまいに畑中先輩に嫌味言われて、ゼミ室追い出されるし。


飴玉あげるって、ナニソレ。


「ムラクモスポーツの割引券だって。ミヤミユいる?」


 いらねー。


「クロエどーぞ。バイトあるから、じゃあね」


 バイトなんてうそ。


今夜は潮時だからこれからユウに会いに行く。


クロエのお守りはミユキの役目。


あたしは辻沢に行かねば。


家に帰って支度して、出発は7時ごろかな。


 早速オトナから着信。


[23時 シャトー大曲地下駐車場 赤いオープンカー]


 赤いオープンカーって何のことだろ。


ユウは免許持ってなかったはずだけど。


まあ、行けば分かるか。


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