「辻沢ノーツ 36」(ミヤミユとお買い物)

 ミヤミユに付き合ってもらって、N市のビックヤマダセンターでICレコーダーとデジカメを買い直した。


2人だけで出かけたのは、サキが一時帰省中だったから。


 帰ってきて、駅前のゴリゴリモバイル(ゴリモバ)ショップを覗いたら激安スマホが売ってて思わず買ってしまった。スマホ代はちょっと出費だったけど、コミコミで月額1980円っていうのと3カ月間は解約自由だっていうのに惹かれた。


 ヤオマン珈琲でミヤミユに初期設定してもらってから共通の知り合いの連絡先を登録させてもらった。


 帰ってすぐにフジミユに番号とメアドを知らせるために電話。


「しばらく連絡ないから心配した」


 いつものメリハリのある声が聞こえた。


「ごめん」


「で、遊女には会わせてもらえたの?」


 やっぱりそのこと聞きたいよね。


「会えたと言うか。話は聞けた」


「そっか。いろいろ分かったんだ」


「うん」


 フジミユに鬼子のことを聞こうと思ったけどやめにした。もう少し自分で調べてからにしようと思ったから。


地下道でミヤミユに会ったことも気になっていたけど、こっちはフジミユに聞いても意味がなさそうでやめた。


「辻沢のヴァンパイアってさ、本当だったりしないかな」


「何を急に。口承だって鞠野フスキが言ってなかった?」


「そうだけど、ひょっとしてって」


「疲れてる?」


「ううん」


 しばしの沈黙。そして言いにくそうな声で、


「あくまで冗談でだけどね、『辻沢ノート』の家系図はヴァンパイアの系図だってのは聞いたことあるよ」


「ヴァンパイアって遺伝なの? 感染するのかと思ってた」


「いろいろいるんじゃない?」


 フジミユの声のトーンが下がった。怒ったのかな。


「ごめんね」


「いいよ。ガンバレ」


「ありがと」


 電話を切ってすぐ、荷物の中に放り込んでおいた『ノート』を取り出して系図を見てみた。


最初に宮木野と志野婦の姉妹。


そして志野婦から下はなく、宮木野から5つの支流が伸びていて、それぞれが昭和まで連綿と続いている。


気になるのが、ところどころに附された「妓」という文字。


最初に、宮木野と志野婦の名の肩に附されていて、下にいくと世代ごとに一つ、二つあり、これも昭和まで続いている。


その妓の字があるのは女性の名前で、しかも姉妹がいる場合だけだった。


凡例にはこれは芸妓の意味とあるけれど。


(「宮木野の子孫に、女の双子が生まれるとどっちかがヴァンパイアってのが続いたんだって」)


 バスでJKが話していたことを思い出す。


この系図に出て来る名前は明治以降全て仮称とあるから実際と照らすことはできないけど、もし事実関係を裏付ける資料があれば……。


裏資料?


『日記』だ。四宮浩太郎の日記にそれがあるかも知れない。


……あたし、やっぱ疲れてるかな。



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