転生した僕はダンジョンで事務員しています。〜え? 勇者? いや、戦闘力ゼロなんで勇者じゃないです〜

くじら時計

プロローグ ~事務員をクビになりました~

第1話

「クビ……ですか?」


朝からいつものように書類の束を抱えたままの僕には、話しの内容が理解できなかった。


「そうだグズタ。今までお疲れだったな。後は後任がやるからさっさとギルドから出ていけ。」


「えっ、そんな。いや、急に言われても……引き継ぎとかもしてないですし……」


「そんなもん、マニュアルがあるから引き継ぎなんぞいらん。ほら、お前の荷物だ。さっさと出ていけ。」


荷物を投げつけられ、手にもっていた書類が辺りに飛び散った。


僕の荷物を投げるなよ。そして、僕は書類の束を持ってたから受け取れる訳ないじゃないか。


口に出さず、心の中でつぶやきながら床にばら撒かれた書類を集めようとした。


その矢先に、僕はハゲでムキムキの男に首根っこを掴まれ、荷物の入った袋と一緒にギルドの入り口から外に投げ捨てられた。


ギルドに戻るにしてもハゲでムキムキの男が入口で仁王立ちしている。いつも事務作業で体がヒョロヒョロの僕では、とても勝てそうにない。


何度もギルドを振り返りながら、僕はギルドから去っていった。その間も、ハゲでムキムキの男はこちらをずっと睨んでいた。


はぁ……最悪だ。


職場をこんな形で辞めさせられることになるなんて思ってもみなかったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る