25――テンペスト
「お見事」
山の中腹で出会った大型の魔物を、双子エルフが鮮やかに瞬殺する。
その鮮やかなまでの見事な連携に、俺は思わずパチパチと手を叩いてしまう。
合成した宝玉の効果も大きいが、それを抜きに考えても、二人の動きはとても洗礼されている物だった。
「流石はカイルさんが太鼓判を押しただけはある」
「いえいえ、俺達なんていたらない事だらけの若輩です。眷属様から頂いた力が無ければ、今の魔物もこう容易くはいきませんでしたよ」
兄のドマさんが謙遜する。
彼は自身を若輩というが、人間の何倍も生きるエルフと言う存在は、人間に比べて成人の期間が出鱈目に長いため見た目からでは年齢がよく分からない。
「そう言えば、お二人はいくつぐらいなんですか?」
ちょっと気になって聞いてみた。
だがよく考えるとエマさんは女性だ。
少し失礼だったかもしれない。
「私達兄妹は今年で19になります」
「え!?そうなんですか?」
思っていた以上に若い。
若輩と言っても、エルフなら100歳でも余裕でそう言いそうだとおもっていたので、もっと俺の何倍も生きている物とばかり思っていた。
「俺と3つしか変わらないのにあんな動きが出来るなんて、凄いですね」
「カイルさんが、二人は天才だっていつも言ってます」
出会った頃はオドオドして尻すぼみな喋り方だったが、今のサラははきはきと喋る様になっていた。
俺に馴れたというのもあるだろうが、同じエルフが傍にいるという安心感が大きいのだろう。
きっとこれがサラの本来の姿に違いない。
更に俺達は山を登り進む。
途中3度魔物に襲われたが、どれも危うげなく双子がサクッと始末してくれた。
そして山頂付近に差し掛かったところで――
「眷属様……上から何者かが此方へとやってきます」
エマさんが振り返らず告げる。
山頂側を見上げると、素早く動く影がいくつか見えた。
ハッキリと見えた訳ではないが、何となくだが相手は予想できた。
ドラゴンのエリアを出て直ぐに襲ってきた奴らは、見張っていたと言っていた。
ここが幻獣の居場所に通じているのなら、同じ様に見張られていてもおかしくはない。
そう――闇の使徒だ。
「闇の眷属!?私が魔法で!」
彼らの姿をハッキリ捕らえたのか、サラが一歩前に出て詠唱を始める。
どうやら魔法を使って先制で仕掛ける様だ。
早さが4倍になっている為か、サラの詠唱はびっくりする程早い。
余りにも早口過ぎて、なんて言ってるのかさっぱりわからない程に。
「サラ、死なない程度に手加減を頼む」
奴らは貴重な情報源だ。
出来れば生かして捕らえたかった。
「はい!テンペスト!」
彼女の両手から暴風が生まれ、砂煙を上げる巨大な竜巻が生まれる。
それは見た事のない程強力な魔法だった。
「行きます!」
サラの声と同時に巨大な竜巻が弾けて嵐となり、山肌を駆けのぼっていく。
その通り道にあるを全て薙ぎ倒して。
「……」
とんでもなく高威力な魔法だ。
これも魔力4倍の影響だろう。
「凄いぞサラ!」そう褒めてやりたい所だが、これ喰らったら相手全部死んじまうぞ。
手加減どこいった?
「あ、大丈夫です!ちゃんと直撃を外す様に使いましたから!」
俺の視線から言いたい事を悟ったのだろう。
つか、あんな巨力な魔法を細かにコントロールしたのか……最初会った時から天才だとは思っていたが、流石はハイエルフだけはある。
「死んでいますね」
しかし、闇の眷属は全滅していた。
但し、死因はサラの魔法ではない。
その全身から血が噴き出ていたので、全員呪いで自害したっぽい。
サラの魔法を受けて勝ち目がないと判断したのだろう。
前回といい、こいつらの行動は引くぐらい徹底している。
「厄介だな。全く」
この調子だと、こいつ等から情報を集めるのは無理ゲーに近い。
俄然、幻獣に期待せざる得なくなってしまった。
頼むよほんと。
当てもなく、延々黄金の宝玉を守るとかやってられんからな。
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