ただならぬ鳥

黒イ卵

鳥と卵

その鳥が温めていたのは、一見只の模様のある卵だった。


 違いがあるとすれば、地球がすっぽり入る大きさで、木星の渦巻きに似た色をして、常にぐらぐらと揺れ動いたことだろう。

 もう、何京か何垓か過ぎたのだろうか、それでもその鳥は身動ぎ一つせず、孵化を待った。


 羽の白は剥がれ落ち、黒く汚れても、体が痩せ、骨が露出しても、卵の上から動かなかった。


 最早その鳥が、生きているのかどうかわからなくなり、やがて鳥と卵は一体化し、一つのオブジェのようになっていた。


 何がきっかけだったのだろうか。


 おそらく殻があったと思われる部分にひびが入り、あっという間に全体に行き渡ったかと思うと、ぴしりという音を立てて、勢いよく、鳥と卵は割れた。


 中からはいわゆる、例の、有名な‘青い鳥’がさえずり、幸福とやらは身近にあるということを示してくれたそうだ。


 今もなお、何処かに伝わるお話と聞く。

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ただならぬ鳥 黒イ卵 @kuroitamago

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