天魔の塔の管理人

神城零次

プロローグ

彷徨える塔。通称:天魔の塔。

どの国にも属さない。魔法を極めた者たちが、集う塔。

最古参に当たる彼はいつも通りの行動をしていたはずだった。

頬に当たる冷たい床の感触。

動かない手足。思考を埋める飢餓感。


マズイなぁ……、と頭の隅で考えながら今自分が何処に居るか考えて絶望を覚える。

ここの住人達は自分のことを探しもしないだろう。

自分の研究に思いをはせるか、寝ているはずだ。

永い永い時を生き、自分の真名を呼ぶ者もいなくなった。

幕引きなのかもしれない、遥か昔に生きる理由など置いてきてしまっていた。

心残りはもちろんあるが、住人達がなんとかしてくれるだろう。

≪ジン≫も残り僅かだ。

天魔の封印も解けるかもしれない。

せめて最後は何も考えずに、眠るように……。


願わくば、この場所が誰の目にも触れないことを……。

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