第56話 いろいろ美味しい
臨時バイトの五人と共に、フードコートまで歩いてくると、ざわめきが大きくなり、スッゲー注目されてるよ、オレ。
「皆さん、朝早くから集まっていただいてありがとうございます。」
「今日は、このダンジョンで採れる食材を使って、試食会を行います、おひとり様、純銀貨2枚で飲み、食べ放題です。」
おおおおっ、スゲー、マジだったか、今日はきて良かった、食うぞ! 飲むぞ!
「ですが、思ったより多くの方々に集まっていただいたので、とりあえず、最初はおひとり様、三品を選んでいただき、全員の方に行きわたってから、次のオーダーをお受けいたします。
お飲み物に関しては、かなりの数をご用意しておりますので、セルフサービスとなりますが、どうぞ、お好きにお飲みください。」
うおおおおおっ、酒さえあれば文句はねーぞ、 ドワーフと蛇人族。
とりあえず、三品食べれて飲み放題だったら、損はねーな、 素早く損得勘定を計算する冒険者達。
手分けして注文し、全品食べれるようにせねばな、 こちらは商人達。
どのようなメニューがあるのでしょうね、 これはジェフリードかな?
「これより、引換券を発売いたしますので、メニューを見ながら、お食べになりたい三品をお選び下さい。」
ささささっ、と猫又達が散開して、
「こちらにお並びいただくのにゃ、引換券をおわたしするのにゃ!」
「こちらでも、受付いたしますよ、お並びください。」
タイガーヴァイスも手伝って大きな混乱もなく、受付が進んで行く。
「受付が終わった方は、11時からの開店となりますので、よろしくお願いします。」
メニューを見ながら、考え込む人も数人いるが、だいたいが仲間内でシェア出来るように注文するものが多かった。
ナナミ達は、あっという間にダンジョンから戻ってきたので、焼きそばの麺、ブルーボアの肉、キャベットが山のように積まれていたが、なんとか開店前に肉とキャベットは一口サイズに切り分けられた。
テーブルも当初の4倍ぐらい多めにし、焼きそば用の鉄板も用意出来た。
そして、いよいよ開店時間だ! さあ、やるぞ!
わらわらと人が入ってきて、受付で渡された引換券をそれぞれのカウンターに持っていき、飲み物を選んでテーブルにつき、どれどれと口に運ぶ。
「美味い!、ちょっと焦げた肉に絡むこの甘辛いタレ、匂いもいいし、これ、たまんねーな。」
「この、パリッ、パリッに焼けた、なんだこれ、ロックバードの皮か?、酒がすすんじまうよ。」
焼き鳥に外れ無し。タレも塩もいけるからね。
「なにこれ、甘くて美味しいー、」
「ほくほくして、あったかくて、おいしー」
焼き芋は、やっぱりご婦人方に好評だ、もちろん、スイーツ男子にも好評のようだ、コメントは無くても表情でわかるから大丈夫だよ。
「この、焼き鳥も美味いが、添えられているこの七味とかいう香辛料と、マヨネーズがこんなに大量に使えるとは、食材が多く出るダンジョンときいていたが、コショウも惜しみなくふるまえるとはな。」
「誠に、生鮮食品は流通させるにも限度がありますが、香辛料ならば、かなり遠くまで運べます、それに、この焼き鳥に使われているタレ、未知なる調味料ではありますが、どうにか手に入れたいものですな。」
料理を味わいながらも、商人達はこれから先の取引をどうするか、商談議に花が咲いている。
味見と称して各種のお酒を嗜んでいるうちに、だんだんとろれつが怪しくなる者達がいたのはご愛嬌だ。
この世界に、是非、お米文化を根付かせたいとのカイルの密かな目論見も、皆の様子を見る限り上手くいきそうだった。
一通り、食事が行きわたったのを確認したので、最初の宣伝通り、好きなものを追加出来ることと、新たに焼きそばを投入したら、みんな、それぞれ好きな料理に群がり始めて、嬉しそうにテーブルに運んでいる。
焼きそばは、家族連れや冒険者に人気があったが、ドワーフや蛇人達にも好評だし、ギルマスのアダムさんはいたくお気に召したようで、三度もお代わりをして、苦しいと騒ぎ、サブマスのアリサさんに冷たい眼で見られていたし、ジェフリードとフェルミーナは、ゆっくりと料理を味わいながら、珍しいお酒を楽しんでいる。
タイガーヴァイスや猫又達、ちゃっかりとミハルも加わり、こちらも楽しくやっている。
辺りを見渡し、料理も酒も好評で、ほっと、安心するカイルだが、ある一角は異様な盛り上がりを見せており、何事かと近づくと、ドワーフと蛇人族の飲み比べ合戦が始まっていた。
双方ともに酒には、目が無い種族で酒豪で知られている、そんな彼らが種族の意地をかけた飲み比べとなっており、いいぞ、やれやれ、と無責任にけしかけるギャラリーもけっこうな数が集まっていた。
そして、よく見ると、煮卵の山が蛇人族の陣地に高く積み上げられていた。
そうか、蛇って、タマゴ大好きだったっけ、もしかして、あんまり人気なかったかな、なんて思ってたりしてたんだけど、何のことはない、蛇人族に一人占めされてただけのようだ。
ドワーフと蛇人族は、一人づつ、テーブルに向かい合って座り、どこから持ってきたのか特大のジョッキに並々とお酒を注ぎ、早く飲み干したほうが勝ちという、対抗戦を繰り広げている。
既に大方の者は、勝負が終わり、残るは二人、めったにない大勝負だと、もうお腹も一杯になった者達が野次馬根性で見に来ており、ミハル達も覗きに来ていた。
大きなジョッキを、グッ、グッ、と飲み干す二人、ウイスキーをストレートで気持ち良さそうに空けていき、ほぼ同時にダン! とテーブルにジョッキを置くと、見物客から拍手が起こった。
「すげーな、あの強い酒精の酒を、二人共ほぼ一気飲みだぜ。」
「ああ、すげーよ、・・俺には無理だな。」
・・・人族には、無理だと思いますよ、下手したら死にますから。
最後の一人が、テーブルに向かうと、
「ちょっと、待った! 最後の勝負は私が預かったわ。」
えっ、ナナミ? なにすんの、 ・・・まさか、勝負しないよね、
「最後の勝負にふさわしい、特別なお酒を用意するから、少し待つのよ、」
そうして、すぐに戻ってきたナナミの後ろから、猫又達が抱えてるものって、あれって、もしかして、もしかしなくても樽酒だよね? なんで、そんなものがここにあるんだよ。
オレ、知らないんだけど・・・ ・・・・ナナミ!
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