3章 勝手に始まる、勝手な計画
第44話 知らないところで国造り
ナナミとシンさんがパタパタと部屋から出て行った。
飲み過ぎたか? でも、ナナミは最初ビールで、あとは梅酒を大分薄めて飲んでたみたいだし、シンさんは、まあ、大丈夫だろう、ちょっと、顔が赤くなってたけど、蛇神様だしな。
つぶれたりはしないだろう、空になった酒瓶が隅のほうで、キレイに並べられている。
そろそろ、片付け始めるか、みんな、喜んでくれて良かったよ、って、猫又達もいないじゃん。
片付けは俺一人か、でも、居酒屋の予行練習と思えばいいか、全部、一人でやるんだしな。
カチャカチャと、片付ける音だけが静かに響いていた頃、
ナナミとシン、猫又達でなにやら、こそこそと話しをしていた。
「なんじゃ、このようなところで、」
「あのね、シンさん、ダイチは居酒屋やりたいって言ってるけど、どう思う。」
「どう、と言われてもな、それが主の望みならば支えるのみだが、」
「でもさ、ダイチは身分を隠してるけど、領主様になる訳でしょう、それに人がいいと言うか、警戒心が薄いと言うか・・そこがいいところでもあるんだけど、ちょっと心配というか、ね、」
「うむ、我が主はお優しい、だがもしも、悪意あるものが近づいたとしても、我が側におれば人間などに遅れはとらぬ。」
「もしも、ロキに目をつけられたらどうするのにゃ?」
「・・・ふ・・・む・・、我が父親か?、確かにいずれということは考えられるな。」
「それでね・・・・・・、」
「・・・うむ、可能じゃが・・」
「で、いづれはね・・・・」
「・・良いかもしれぬな・・・」
「・・我らとミハル様も、協力するのにゃ。」
「・・わかった、主様の・・・ に。」
翌朝、ダイチが朝食の用意をしていると、ナナミ達も起きてきて、サラダと黒パン、果実水であっさりめの朝食を済ませると、ナナミとシン、猫又達は立ち上がり、
「ちょっと、タイガーヴァイスのところに出掛けてくるわね、夕方には帰るわ。たぶん。」
「主様、少々、お側を離れます。1週間程、お時間をいただけますでしょうか?」
「ミハル様のところにいってくるのにゃ、夕方には帰るのにゃ、・・・たぶん。」
えっ、みんな、どこ行くの?、 俺だけハブられてんの?
「サイゾーは、ダイチ様と一緒におりますのにゃ。」
みんな、行っちゃっ・・・た。
何がおきているのか、わからないままに、ポツンとサイゾーくんと一緒に残されたダイチ。
サイゾーくんを腕に抱えてなでなでしながら、きいてみた。
「オレ、もしかして、・・・・嫌われた?」
「そ、そんなことはないのですにゃ、ダイチ様に喜んで欲しいと、昨日、みんなで話し合ったのにゃ。」
そう言えば、昨日、みんなでなんか話してたみたいだけど、なんだか腑に落ちない。
だが、俺のためだと必死に訴えているサイゾーくんの顔を見ていると、それ以上、突っ込むのも気が引けてしまい、何も言えなかったが、、どこかそわそわと落ち着かなかった。
家を出たナナミは、言葉通りにタイガーヴァイスの泊まる宿に向かった、
そして、イリアンとアナに手紙を託し領主の館に行ってもらい、ダンジョンの近くに屋敷を建てる許可を貰って、そのままギルドに報告に行ってもらったのだ。
そして、タイガーヴァイスのメンバーにナナミ達の計画を話したところ、それは面白そうだと全面的な協力を取り付けた。
シンは、蛇人が住んでいる
「これより、我らはダイチ様にお仕えするため、この地を離れる。良いな、速やかに準備を整えよ。」
「お待ちください、父上様、我ら、お言葉には従いますが、ダイチ様というのは、どのようなお方でいらっしゃいますか? 父上様はロキ様に捕らえれたていたのではありませんか?」
「我が父の呪縛より、解き放って下さったのが、ダイチ様なのだ。ダイチ様は人の子ではあるが、我を超える魔力をお持ちであり、この時代の聖女も従えておられる。」
始祖様をお救い下された方なのか、あの、ロキ様の呪縛を破られるとは、本当にそのような方が人の子であるのか?
聖女って、この大陸で一番強い光魔法の使い手だよな、でも、私達、蛇人族は聖女から疎まれておるのではないのか? 様々な意見がささやかれてざわついていた。
「その、聖女ナナミも権力を横取りしようとした者達から、命を狙われていたが、ダイチ様に助けられたので、聖女という身分を隠し、ダイチ様がイザカヤという国を造るために助力しておる。
そして、我らが持つ、強い魔力と引き換えの呪いなような蛇淫の力もダイチ様と聖女の力で抑えることが出来そうなのだ。、長年、この霧に包まれた蒼刻の谷より出て、我らも、安住の地を手に入れようぞ!」
おおっ、さすが始祖様でいらっしゃる。我らのためにそのような御心遣いをご用意いただいておったとは、聖女も我らの味方につくとは、ガヤガヤと皆のざわめきはいっそう、熱を帯びて高まっていった。
蛇人族は、長命で総じて魔力も強いものが多く、その強さ故からか人族からは恐れられ、忌み嫌われる事が多かったが、本来は人恋しい種族なのだ。
自分達の半身ともいえる人に恋をすることも多かったのだが、裏切られたりすると、その強い魔力のまま暴走し自分も相手も滅ぼしてしまうような一面もあったため、だんだんと人族から距離を取り、隠れ住むように霧の深いこの谷で暮らしていたのだ。
そんな蛇人族はシンの娘、サファイルを中心にして蛇人族の移動準備は進んでいった。
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