第43話 初恋はレモーネのお味

ネギ塩タンの次は、厚切り牛タン。タンって薄いものだと思ってたけど、仙台に行って初めて食べた時、思わず、日本酒を注文しちゃったぜ。この噛み応えと滴る肉汁、なんで、厚切り牛タンを、俺は今まで食べれなかったのか、悔やんだよ。


これは、ナナミも初めてだったみたいだが、いい笑顔とサムズアップで応えてくれた。猫又達は噛り付き、噛み切るのに少し苦労してたから、口の周りがべとべとだ、後でふけばいいよ。


シンさんは、薄切りよりもこっちが好みだったみたいで、キラキラ笑顔がパワーアップしてた。


お次はカルビ、これはこの世界でも普通に食べられてるけど、炭火で焼くとやっぱ、香ばしさが違うんだよね、そして、このつけダレ。


ニンニク、唐辛子、ねぎを軽く炒めたら、お酒、みりん、醤油をベースにリゴーネのすりおろしたものをイン。一煮立ちさせたら、白ゴマを散らして出来上がり。本当は海苔も欲しかったが、今回はお見送り。

でも、十分、満足。


ほとんどの料理が塩、コショウ、ハーブの世界で、食欲をそそる醤油の匂い、もう、たまらん。匂いテロだね。 ナナミと猫又達は懐かしい味に手が止まらないらしい。猫又達の口の周りを時々、ナナミが拭いている。


シンさんも、いたくお気に召したようで、このようなものは食べたことが無い、

そうでしょうとも!

食材とは、料理をするとこんなにも美味しくなるのだなと感激。


いつもは一口で丸呑み。お腹に中で消化するので、味わったことがそもそもないらしい。 ・・・・そうでしたか、

唯一、酒だけが味がしたのだと、・・・・・・・酒豪になる訳ですね。


どっかのフランスシェフが、TVで言ってたけど、牛肉に一番合う調味料は醤油だと。俺もそう思うぜ。

なんかのコンテストで、ソースの隠し味に醤油を使って、優勝したらしい。


俺はそんな繊細な料理はつくれないけど、味なら自信がある。ダンジョン”日本の食卓”に恥じるようなものはつくらない!



最後は〆のデザート、食べて驚け!  ヒンヤリ、さっぱり、レモーネとメローネのシャーベットだ。

シャクシャクと、いい感じに固まった。ナナミはメローネ、猫又達はレモーネとメローネで二匹づつ。


シノブちゃんが、目をウルウルさせながら、ミハル様にも食べさせたいにゃん、と上目づかいでおねだり、  いいよ、いいよ、勿論だよ。

お留守番の猫又達にも持っていこうよ、  でも、足りなくなったら作るの手伝ってね。


シンさんは、どちらも満足気に食べている。そんな、シンさんを見てふと思いついたので、レモーネシャーベットに梅酒をチョロッとかけて出してみたら、蕩けそうな笑顔を見せてくれたので、俺も満足。


「シンさんって、普段と違って食べてる時の顔は可愛いんだね。」


そう言ったら、シンさんの顔がちょっと赤くなった?

あっ、こんな若造にそんな事言われて、怒って・・・ないよね、大丈夫だよね?


「うんうん、普段は怖いくらいの美形だけど、食べてる時の顔はマジ可愛いよね。」


854年、生きてきて可愛いと初めて言われたシンさん。

見た目は、超絶イケメン。ハートはピュアラヴ。


焼き肉とシャーベットと初恋の味を覚えました。



「そういえばさ、シンさん、ダンジョン・マスターって知ってる?」


「無論、知っておるが、何か?」


「ダンジョン・マスターって、神様なの?シンさんのお父さんは神族でしょう、その辺、どうなってんのかと思ったんだけど。」


ナナミが猫又達を膝に載せながら、会話に加わる。


「私もそれ、気になってたんだ、猫又達のご主人様はミハルでしょう?、やっぱり神様なの?」


「正確に言えば、ダンジョン・マスターは神ではない。」


シンさんは、はっきりそう言った。おお、流石に長年生きてるだけあって知識も豊富だ。


「神とは、主神、オーディンの御子達となるので、ダンジョン・マスターは違うのだ。ただ、神とよく似た力を持ち、ダンジョンルールが適用される場所では、ヴァルハラの神々でさえも手出し出来ぬ。

ダンジョン・マスターとは、世界の管理者に選ばれた者なのだ。」


世界の管理者?  俺とナナミは顔を見合わせる。


「主様は、時空魔法を会得した時、ナナミはギフトスキルを手に入れた時、頭の中で声が聞こえてきたと思う、それが ”世界の声” 管理者じゃな。」


頭が混乱してきました。話、デカすぎんじゃね、邪神ロキでもお腹いっぱいなのに、世界の管理者とか、もう、いいか、・・・・あるがままで、・・・・シンさんだって、邪神族とかだし、オレ、 人間だし、


「シンさんってさ、神様の子供なんだよね、そんな人が俺みたいな、ただの人間に仕えてていいの?」


「ん?  何を言うているのか良くわからんが、主様がただの人間というのはどういう意味なのかの?

我を上回る魔力を持っているではないか、ましてや時空魔法など、神々でも使える者などそうはおらぬよ。」


神々でも、あんまりいないって、・・・ダメですね。


「それより、主様、このような料理を居酒屋とやらで出すつもりなのかの?」


「んー、焼き肉はやらないと思うけど、この調味料は使うつもりだよ、あとは、お米とかもだな。」


「なるほど、それであのような小さな店を選ばれたのか、では、内装は主様と最高の料理にふさわしく王都から、最高級の職人を20人程、呼び寄せればよいかの。」


なんの、はなしかな?  居酒屋だよね。


「あのような料理であれば、一皿、白金貨2~3枚(200万~300万)程の値段であろう、客も選ばれたもののみで、内装も華麗に整えばならぬ。」


なにやら、一人で夢を見てるのか? 


「シンさんや、一皿、純銀貨1枚(1000円)くらいの値段になると思うけど、・・」


「なんと、そのようなこと、許されませぬ、至高の料理がそのような・・、」


あり得ないと首をふる。


「人間風情が、主様の御料理をいただくのであれば、地にひれ伏し、神々への感謝を述べねばなるまい。」


俺は、・・人間で・・すよ。


「まあまあ、シンさんも落ち着いて、ね、  ちょっと、こっち、  こっちきてくれる。」



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