第32話 焼き鳥は塩派?それともタレ派?

猫又達は、カイルを窺う暗い気配に気付いてはいたが、それよりも大事な目の前のご飯。


「焼き鳥だにゃん。」

「そうね、焼き鳥ね。」


ジャイアント・ロックバードの肉があったので、醤油も手に入ったし、ここは焼き鳥で決まりだ!


甘辛の醤油ダレと塩、そしてビール!  俺は攻撃魔法は使えないが、生活魔法は一通り使えるから(魔石のおか)何度も氷を出して、大きめの桶に入れて少し塩を入れ、キンキンに冷やす! 


さすがに七輪は無いから、炭を積んでレンガで囲み、網を置いて即席の炭火焼コーナーを作ったぜ。準備をしてたら、タイガーヴァイスのメンバー達がやってきた。


「おう、ダイチ、今日はどんな美味いもん食わしてくれんだ、楽しみだぜ。」


「イリアンさん、なんで今日ここに?」


「なんでって、前にお前が食わしてくれたおにぎりだっけ、あれ、美味かったしな、家に帰ったらもっと美味いもん食えんのかな?って思ったら、来るだろ、普通。」


「まあ、俺達もダンジョンから出た肉と酒持ってきたからよ、師匠とダイチと一杯やろうぜって来たんだよ。」


イルガーさんが、ロックバードの肉と、ビールを持ってきてくれた。ドワーフのバルサさんはしっかりとウイスキーを握っている。


肉も酒も持ってきてくれたんなら、皆でわいわい食べるほうが美味しいしな、だけど、焼き鳥は串に刺すのが面倒なんだよ、意外と時間かかるからさ、


「じゃあ、人数も増えたから準備を手伝ってくれる?ナナミとアナさん、料理手伝って。この肉とネギを木串に刺していくから、」


「「やだ!」」

気が合うんですね、こういう時は、


「そんなもん、なんで刺すんだ? そのまま焼きゃいいじゃねえかよ。」


イルガーさんには期待してませんから、ああ、他のメンバーもですけどね、


「大丈夫なのにゃ、ハットリがお手伝いするのにゃ、」


意外なところから助っ人が、って早!


肉を軽く放り投げハットリくんが爪を軽く十字に振ったように見えたらあっと言う間に細かくなっていた.


ネギをサイゾーくんが同じように爪を振るい均等に切っていき、ハットリくんが串を手裏剣のように飛ばして、あっという間にネギマ串が出来あがった。スゲー。


同じようにニンニクを挟んだものと、トマトを挟んだものを作ってもらった。俺一人だったら一時間かかっても終わらなかったかもしれないけど、10分足らずで串の山が出来上がった。



炭をおこしていい感じに熱くなったところで、お待ちかねの焼き鳥を網に載せる。


まずは塩味からだ。ジュージューと肉が焼けるいい匂いがしてきて、肉汁が滴りジュッと炭に落ちる。表面に軽く焦げがついたら出来上がり。


「美味しい!」

「肉が香ばしいな、少しだけついた焦げがたまんねー、ビールに合うっっ!」

「美味いですにゃ、」


俺は焼き鳥にはビール派だが、この世界ではワインも多いのでもちろん用意してある。


ちょっと邪道だが、少しだけ水で割って冷やして飲むのもアリだ。俺が目指すのは居酒屋なんで、お上品さなんかより、美味しく楽しく食べて飲めればそれでいい。


ワインはイリアンさん、アナさん、ビールは、オレ、ナナミ、虎人族のイルガーさん、巨人族のドローウィッシュさん、


ドワーフのバルサさんは、焼き鳥をつまみ、冷えたビールを一気飲みし、口直しにウイスキーのロックをグビり、ぷっふぁー、そしてまた、一気飲みの後に、ガブリ、ごくごく、ぷっふぁーを繰り返している。


ここは異世界、ドワーフだし、ちゃんぽんでも大丈夫だろう、


塩焼きで乾杯も済ませたので、お次は鳥皮だ。


好き嫌いが分かれるところだが、パリッ、パリッに焼いた皮はつまみに最高! 


そして俺的には皮は塩一択。


まあ、たれも美味いが今日は塩のみで、焼き始めたら皆の反応があまり良くなかったんだが、コラーゲンが豊富なんでお肌がプリッ、プリッのもちもちになりますよと言ったら、アナさんが食いついた。


「えっ、やだ、美味しい!ブヨブヨしてなーい。」

パリッ、パリッに焼きましたからね、


「本当だ、うめー、」

「おお、こりゃあ、美味いのう、ビールが進むわい。」  とまた、ごくごく。



イリアンさんとバルサさんにも好評だ!


そして、ミハルに頼んで手に入れた七味もここで登場!

皿の隅に七味を載せてチョンとつけて食べる。


「うめぇぇぇー!」 


 これだよ、これ、懐かしいなぁ、鳥皮に七味、そして冷えたビール、ヤバイ、泣きそう、明日はミハルにもお供えさしいれしないと、


「なんだ、ダイチ、何食ってんだよ、俺にも食わせろ。」

目ざとく見つけたイルガーさん、


「これ、七味っていってあのダンジョンで見つけたんですよ、鑑定したらスパイシーな香辛料ってなってたんで使ってみたら、めっちゃ合います!試してみます?」


どれどれと、自分が持ってた串をダイチの皿の七味にチョンとつけて、パクリ。


「うめーな、これ、なんか、クセになりそうな味だ、」

「ですよねー、そして、この辛味がまたお酒に合う、」

「ワシにもよこせ!」


バルサさんが、酒に合うの一言を聞き逃すはずもない、ひったくるように七味を奪い、ドバドバと皿にのせる、


「そんなにつけたら、辛いですよ。」と言ってみたが、

「美味い!、こりゃあいいのう、」

と更に七味を追加でイン、ドワーフの胃腸は丈夫なんだな、きっと、


「・・・これ、うまい。」巨人族のドローウィッシュさんは、普段から無口だが、楽しそうにしてくれている。ナナミとアナさんは話が合うのか、大いに盛り上がっている。女子バナか?


猫又達もみんな、美味しそうに食べてくれてる、やっぱり猫舌なようで、ふうーふうーさましてる姿が可愛くて時々ナナミにいじられてるけどな、またたび酒でも作ってやれば良かったかな?



そして、お待ちかねの甘辛のしょう油ダレだ。


ジュージューと油と一緒に、タレが落ちてなんとも言えない香ばしい匂いが漂いはじめると、みんな網の近くに集まりだした。うん、うん、この匂いにはやられるよね、万国共通、異世界共通、


「なんだよ、ダイチ、すげー、いい匂いじゃん、ある程度食ったのに、なんかたまんねーわ。」

「いい匂いがする。」

「なんじゃ、これも酒に合う匂いじゃの」

「・・・・・」


ふふん、日本食奥義、秘技しょう油ダレ 其ノ壱、外しはしねーぜ。



「「「「「「美味い!!!」」」」」」


だろっ!



ご機嫌で飲み食いを続けるみんなの周りで、猫又達はついつい手が出そうになる欲望と戦っていた。


あまり食べすぎると体も感覚も鈍くなってしまうから、夜なのに、小さな青い鳥がダイチ達をこっそりと見張っていたからだ。



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