第10話 お出かけ
倒れるまで体を苛め抜き、ポーションを飲み、又、倒れまで走り込み、腕立て、 腹筋はいうに及ばず、合気道や柔道の組手まで待ったなし。
俺はポーションを何度か吐きました。マジで。
こんなトレーニング聞いたことないし、そもそも、ポーションだってそれなりにお高いのに、何度買い足しをさせらたことか、汎用のポーションだって、純銀貨7~8枚するのに、それを一日で一人20本程消費してきて、ここ数日は食事も取らず、口にするものはポーションのみだ。
ナナミが言うには、何も食べなくてもポーション1本で数日は生きられる。余分な栄養素が全くないので、その間に動けば動くほど良質な筋肉が作られるとか、
そんなの聞いたことないんですが…、逆らう気力など、微塵もない。
そんな死んだような眼をしているダイチの横で、ご機嫌なナナミ。
さすが、異世界。こんなに早くリハビリが進むと思わなかったわ。
ポーションとか魔法とか、これはもう常識が変わるわね。
2週間程度で以前の7~8割復活するなんてすごい!
自分の体をペタペタと触って、軽く体を動かして、仕上がり具合を確かめる。
透き通るようだった白い肌は、以前よりも引き締まり、血色も良くなってる。
肩より少し長い髪をポニーテールにして、赤い房飾りのヒモでしばり、キビキビと動きまわる様子からは
聖女の面影はすでに遠く、さながら女騎士のようだった。
「ねえ、ダイチ、体力も順調に上がってきてるし、今日は街の外に出てみない?
魔法もどれくらい使えるか試したいけど、街の中じゃ危ないでしょう?」
軽い柔軟をこなしながら、そうきかれたダイチは、
「そうしよう! それがいいよ。」と、とても嬉しそうだ。
倒れるまでしごかれ、ポーションで無理やり回復させられ、又、倒れるまでの無限ループから解放されるならなんでもいい。
ナナミの気が変わらないうちにと、冒険者カードや水や薬、軽くつまめる食事、それと嫌そうにポーションを見て、仕方なく荷物に詰める。軽い傷程度は薬草で治すのが一般的だが、重症な場合はポーションのほうが効き目が早く確実だ。
「それだったら、南門から出ようか、一番人が少ないからさ、荒野に出る魔獣はあまりいないし、岩塩や薬草、薬花に採集にくる低ランクの冒険者が少しいるぐらいだからさ。」
と、手早くまとめた荷物を肩にかけて歩き出し、南門で冒険者カードを見せて、城壁の外に出る。
ナナミは、周りをキョロキョロと物珍しそうに見回している。
「ここら辺は岩が多くて植物は少ないんだ、魔の森までは、ずっと同じような景色が続くよ。ここから一時間位歩くと、岩塩が取れる場所があって冒険者もちらほらいるから、その先まで行こう。」
「分かったわ、場所は任せる。」
魔法を使うのを人に見られたくないしな、それほど高位の魔法を使うつもりはないが、実際、俺は、いろいろな種類が使えるがどれもレベルが高くない。いわゆる器用貧乏ってやつなんだ。
だが、ナナミは聖女の魔法が使える…はずだ。
魔力は強いがナナミが使いこなせるかどうかわからないし、どんな不測の事態が起きるか分からない。
やっぱり、誰にも見つからず、被害が最小限で押さえられるようなところじゃないと、危なすぎる。
そう思って選んだ場所、岩塩の採掘場所であるピンクバレーを回り込んで、誰もいない荒れ地に着いた。
ここまで三時間以上歩いてきたが、ほとんど疲れを感じない。地獄の特訓の成果は着実に身についているようだ。
「ここだったら、少しくらい失敗しても大丈夫だから、試してみようか。」
Lv,1 光球(ライトニング) 辺りを明るく照らす
Lv,2 治癒(ヒール) 軽度の傷を治す・血止めをする・痛みを和らげる
Lv,3 中級治癒(ミドルヒール) 数センチ程度の傷を塞げる・
Lv,4 治癒・毒 (キュア) 毒消し(低)
Lv,5 治癒・毒 (ミドルキュア) 毒消し(中)
結果は何の問題もなく使えた。 Lv,5までは。他にもいろいろと試してみて不安定な発動や、威力不足な点はあったがコントロール不能になることもなく、無事にすすんでいった。
Lv,5以上は、もう少し魔力となじまないと使えないと思うと言ってたが十分すぎるだろう。
MPが残り半分位になったところで、ストップをかけた。気が付いたらずいぶんと魔力が減っていたからだ。
疲れも感じてるはずだしな、俺は鑑定スキルがあるので無茶しすぎないで済む。
少し休憩をしようと声をかけ、日陰になっている場所を探すと、大きな岩陰の横に洞穴が見えたので移動する。 涼しそうだ。
「あー、疲れた。お腹も空いたよ、 早く食べよう。 ねえねえ、果実水、冷たくして欲しいな。」
アイテムボックスから、果実水を取り出して、冷たくしてからナナミに渡す。
氷の魔法石に魔力を通せば、あっという間に冷やすことが可能だ、
「冷たくておいしいっ!、魔法最高! 超便利だよね。それに今日から私も魔法少女だよ。」
20後半(中身)の魔法少女…痛々しくないか…
いや、本人がいいならそれでいいんだ。
だって今日はいつもの鬼教官ではないんだから。
そう思い直して、パンとソーセージも出して二人で食べ始める。
今使った光魔法の話をしながら、食事を楽しんでいると、
二人の近くに数匹の蛇が身を潜めていた。
チロチロと赤い舌を出し、二人を見ていたうちの一匹が動き、合わせるように他の蛇達も動いた。
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