見習い召喚士の少女が弟子入りする
「私はサラと申します。召喚士の見習いとして冒険者をしています」
俺の予想は当たっていたようだ。彼女もまた召喚士をしているようだった。
「そうなんだ。冒険者をしているのですか」
「はい。ランス様は何をなさっているのですか?」
「俺はさすらいの旅人。世界の命運をかけた旅をしているところさ。……いや嘘です。ごめん、冗談言った。無職です。さっき宮廷を追い出されたところです」
「まあ、どうしてランス様が宮廷を追い出される事になったのですか?」
「それは……まあ、色々とあって」
俺はどのように説明をすればいいか悩んでいた。悩んだ挙句正直に話す事にした。
「実は王国の王子達と地下迷宮に行ったときに何もできない無能だって言われて、それでクビになったんだ」
「まあ!? それは本当ですか!?」
「ああ。……本当だよ」
「でもおかしいです。これだけ強力な召喚魔法を使えるランス様が何もできないはずがありません。きっとその行為には何か特別な意味があったはずです」
「よくわかるね。確かに俺は何もしないように見えた。だけど支援魔法を使って支援はしてた。俺の召喚獣がモンスターを倒すと経験値は俺にしか入らないんだ。だから敢えて召喚魔法を使わなかったんだよ」
「やはり、そのような理由で使われなかったのですね。それを見抜けなかった王子の目は節穴であります!」
「ははっ。そう言って貰えると嬉しいよ」
俺は笑みを浮かべる。
「そうだ! ランス様。ランス様さえよろしければ私を弟子にして頂けないでしょうか?」
「弟子に?」
「はい。是非、弟子にしてください。私は今は見習いの召喚士ですが、いつかはランス様のような凄い召喚士になりたいのです」
サラは目を輝かせる。
その目の輝きは俺がかつて召喚士に憧れていたものと同じ目だ。
無垢な目の輝きはかつての自分を見ているかのようで断りづらかった。
特に何も今後の予定はなかったのだ。だから俺は彼女の願いを断るだけの理由を持ち合わせてはいなかった。
「いいよ。別に」
「まあ、本当ですか」
「ああ。本当だ。別段これからやりたい事もなかったし。けどサラは職業としては召喚士だとは思うけど、立場といえば冒険者なんだろう?」
「はい。冒険者です」
冒険者。ギルドからの依頼を受けてモンスターを討伐したりして金を稼ぐ、そういう稼業につく人々を総称する言葉だ。宮廷にいた俺だって知っている。
「サラに召喚魔法を教えるって事は俺はサラと行動を共にしなければならない。つまりは俺も冒険者にならないといけないって事だ。冒険者になるには冒険者ギルドに行かないと」
「はい。そうなりますね。つまり、私に召喚魔法を教えてくださるって事ですか」
「まあ、いいよ。別に何もやる事なかったし」
「ありがとうございます。でしたら、ランス様は私にとっての先生ですね。ランス先生と呼ばせてもらってもいいですか?」
「いいよ。別に。特に今後どうするか考えあぐねていたところだから」
「ありがとうございます! ランス先生!」
サラは俺に抱き着いてきた。女の子独特の良い匂いがする。それからシャンプーの匂いも。そして二つの柔らかい感触が伝わってくる。
「おいっ! あんまりくっつくなよ! サラ! 俺だって男なんだぞっ! 変に勘違いをさせるなっ!」
「勘違い? 一体どんな勘違いをランス先生はするんですか?」
サラはきょとんとした表情になる。
もしかしたらサラは良いところのお嬢様なんじゃないか。
あまりそういった観念がない気がする。
そんなお嬢様がなぜ冒険者なんてシビアな仕事を選んだのかを理解はできないが。そういえばユグドレシアという苗字は聞いた事がある。
召喚士の家系の名家である。もしその通りなのだとしたら彼女は正真正銘のお嬢様という事になった。これについては後々深く聞いておきたいとは思うが。
「ともかくよろしくお願いします。ランス先生」
「よろしくなっ。サラ」
こうして俺は召喚士見習いの少女であるサラを弟子としてとる事になった。
こうして俺はサラに同じ冒険者として同行し、召喚魔法を教えていく事になったのである。
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