今日も空を見上げている / 兎駒草

追手門学院大学文芸同好会

第1話

 計画通りにならない。これは実に悲しい。空を見上げて祈りを捧げて神様仏様とナムナムしておりますが、神も仏も助けてくれない。何をそんなに慌てているのか、気になるかもしれないが、締め切りがあと十時間きっているのだ。実に困った。


 元々書きたい物語がありました。結構ありました。めちゃくちゃありました。その中で選りすぐりの物語を選んで書き始めたのがつい一か月前。だがしかし、こんなくだらない私小説が書かれている時点でお察しだと思いますが。挫折しました。さて、なぜだ。なぜ、上手くいかないのだ。欲望が多かったのは事実だ。そろそろ自分の睡魔さんと真っ向に勝負して生活習慣を整えたりしないといけないと決心しております。墜落していく私の創作意欲。作りたいものが沢山ありすぎるのが問題なのでしょう。断捨離もしないといけないかもしれない。


 さて、文字稼ぎもそろそろ終えるとして(今の目標文字数は二千文字である)、本題に入りたいと思う。この物語に本題があるのかどうか疑問に思われると思うが実はちゃんとあるのだ。ズバリ、「あれ?私、本を読むより空を見上げることの方が多くね?」



 題名 今日も空を見上げている



 空を見ることが好きです。大好きです。空を見ることが大好きです。朝早く起きて見る淡い水色の空も、真昼間に見る青い蒼い空も、黄昏時に見る黄金に輝く空も、草木も眠る夜に見る真っ黒なキャンパスに輝く星空も、湿気が酷い灰色の雲が広がる空も、暴風が雷が煩い空も、みんなみんな大好きだ。空はとても楽しい、見ていて楽しい。空を自由に飛びたいと何度も何度も願った。それこそ、お星さまに何度も何度も願った。


「この空を自由に飛びたいです」

「あのコウモリさんの様に」

「あの鳥さんの様に」

「この綺麗な空を」


 未だにお星さまは叶えてくれない。




 本を読むことが好きです。大好きです。本を読むことが大好きです。王様が悪いことをして庶民が倒される本も、甘すぎて涙が出てきてしまう恋愛小説も、ズバッと難事件を解決するミステリー小説も、傲慢な人間が神様に罰を与えられる本も、人が次々殺されていく小説も、そして誰もいなくなる小説も、みんなみんな大好きだ。いや、ハーレム小説。貴様はダメだ。いつから男のロマンがハーレムになったのですか。ドキドキワクワクの冒険談とか、よく分からない謎理論を繰り広げられるSFとかの方がロマン溢れますよ。そんな感じで苦手な小説もありますが、それを含めえて本が好きだ。私はいつかこの本の世界を自由に旅をしたいと何度も何度も願った。それこそ、私はペンを握って、パソコンのキーボードを叩き、本の世界へ旅立たんとしている。だが、未だに旅立つことができていない。


 なぜなのか? 決まっている、未だに、この現実世界を堪能しきっていないからだ。


 考えてみろ、恋愛経験がない奴の恋物語とか書けるわけがない。いや、書けると思うが、書いているとき心苦しいだろうし、何より現実味が無さすぎる。「フィクション」に「リアリティー」を求めるのは違和感を覚えてしまうが結論的に言えばそういうことなのだ。いつの間にか、本の世界が薄っぺらいものになってしまっていた。だから、「リアル」である空が「フィクション」みたいな世界を繰り広げているのが面白くて魅入られてしまったのだ。夜遅くに誰もいない河川敷で空を見上げたりすることは、本の世界よりも非現実的な世界を現実に作り出している。静寂した空間、人がいる気配が全くない。ただ空に輝く月明りが私だけを照らしている。その月に、空に魅入られてしまってドンドンおかしくなっていく。ビュービュー、ガサガサ、ぴちゃぴゅちゃ。自然の音が私を囲んでいく、何かがいる気がする。そんな気がする。そんな気がして正解だ。近くで車が走る音が聞こえてやっと我に返れる。身体の限界を感じるまで何度も何度も同じことの繰り返し。ああ、楽しい。楽しいからクルクルその場で踊ってしまう。意味も無く、規則性も無く、思いつくままクルクル踊るのだ。笑いながら、意味もなく、規則性も無く。クルクルクルクル。この文と同じように意味も無く、規則性も無く。楽しい。楽しい。


 ね? 現実の方が非現実的に思えません?


 初めて夜寝ることなく朝まで過ごした日のことを覚えている。幼い時の僕は「太陽がいつ昇ってくるのか気になる! 」と、思って窓の近くに座ってずーっと空を見上げていた。なぜだか、その時の空の動きは今もハッキリ覚えている。空が傾いていた。黒い空が少し少しずつ傾いていき、お箸を持たない手の方から少しずつ青い空が出てきていた。月や星は「私たちの時間は終わりだよ」と言わんばかりに消えていった。僕はその光景を鮮明に覚えている。美しいとか、綺麗とかそんな上品な言葉を持っていなかったけど、あの時の僕は確かにロマンを感じていた。雀がちゅんちゅん鳴き始めた頃には僕は眠ってしまった。広くて大きな空で繰り広げられている変化に心がときめいていた。時は流れて現在、一人称が僕から私に代わって、図体も大きくなりはしたが、あの日空を見上げていた時と同じように。今日も空を見上げている。


 長々と書いて、結局何が言いたかったのかと申しますと。

「空は綺麗だ」ただこれだけです。

 物書きってそういうものですから。








 あとがき


 前書きを書いたから、あとがきがないと思ったら大間違いです。言い訳は批評の時にさせてください。


 今回は、自由な文学というのに挑戦してみました。物語風を装いつつ、私小説を装いつつ、自分の内面を精神年齢を幼稚園レベルにしつつ、大暴れしようと思ったのです。織田作之助さんの「可能性の文学」が面白くてついやってしまいました。反省はしています。


 次回は、恋愛ものに挑戦します…。嘘になるかもしれませんが。

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