隣人の彼は

ハル

第1話 キス魔男子

「怜華(れいか)今日もお願いね」



親友の、石 弥冬(せき みふゆ)。20歳から合コンに誘われる私。



「でも、私、こんな容姿だから辞めた方が…」

「怜華は眼鏡外せばイケてるんだよ」

「イケてないよ」

「イケてるから、あんな事あったんでしょう?」

「それは……」



私の名前は


村瀬 怜華(むらせ れいか)。20歳。


実は私、眼鏡を掛けて真面目さ漂わせているけど、眼鏡を外せば誰もが頷く美人顔。


学生の時、あんな事あって以来、私は男の人への恐怖感がある。




――― そう ―――



あれは中学校の受験真っ只中、塾に通っていた私は暗い夜道の塾帰りにストーカー行為をされていた相手から


レイプされそうになり、その日以来、異性に対する恐怖と一気に苦手意識が強くなってしまった。


うまく逃げて難を逃れ未遂に終わったけど、たった一回の事件だけど、あの恐怖感から未だに吹っ切れていないのが現状だ。


その為、眼鏡を掛けて容姿を隠すように過ごしていた為、恋愛経験はないまま今を至っている。


弥冬は、少しでも異性に対する恐怖と和らげる為、合コンに誘ってくれているんだけど、異性に対する苦手意識がなくならない限り恋愛なんて出来ない。




弥冬は、いつも言う。




『怜華は、モテモテだったはず。でも、逆に遊ばれてそうで、もっと深い傷を負っていたかも』


と ―――――




20歳になり、少しでもと思うけど、心の傷と私自身を好きになって一途に愛してくれる人が現れない限り私の将来は決まったものだ。





そして、合コン当日 ――――




どうやったら、こんなメンツが揃うのだろうか?


性格はさておき、文句なしのイケメン揃いだ。


合コンが盛り上がる中、一人の男の人の様子が変わった。




「なあ……将弥ぁ~?」

「うわっ!」




ドサッ


合コンの参加の席、彼の友達と思われる人


越埜 将弥(こしの まさや)君が、


一人の男の人


嘉山 裕斗(かやま ゆうと)君に、押し倒される姿。



二人とも、23歳の男の人だ。




「よ、よせっ!男の俺にキスするなっ!」



抵抗する男の人。




≪えっ!?キスぅっ!?≫

≪どうしてキス!?≫

≪そういう関係!?≫



騒々しい二人に私は何が起こっているのか把握出来ていない。


他の人は茶化す。


キスを迫る裕斗君の姿。




「良いじゃーん!将弥く~ん。キス位、減らないっしょ~?」


「そういう問題じゃなくて、俺は男だ!」


「ねえねえ、誰か俺とチューしよ♪」




≪何となく分かって気がする≫

≪酒癖?脱ぐ人とか……その一部だよね≫



「誰か~キスしよう♪」



甘えるような口調で言う男の人。



≪こういう人、本当にいるんだ≫



そう思う中、初めて見る光景に男の人への恐怖感が一瞬なくなり、何だか可愛く見えてしまう。




その時だ!



「決~~~めたっ!」



≪えっ!?≫




その言葉と同時に私と目が合った事に気付いた。



≪えっ?えっ? ま、まさか……私ぃっ!?≫



周囲も気付いたのか



「おっと!ターゲットが決まったようです!」



参加者の一人が実況中継みたいに言った。


そして、私にみんなの視線が集中した。



≪やっぱり私だっ!≫




グイッと腕を掴まれた。



ビクッ

体が強張った。



「きゃあっ!」



勢いで眼鏡が外れ、キスされた。



ドサッ

倒れる私達。



「………………」



私は裕斗君の上に乗ったまま抱きしめられているような体勢になっている。


私は顔をあげていく中、裕斗君と目が合った。



ドキッ


「ごめん、彼女の眼鏡、拾って貰って良い?」

「眼鏡?ああ」



≪えっ!?眼鏡がない?≫

≪嘘っ!?バレたっ!どうしよう!?≫



「なあ……それだけ美人なのに……何か訳あり?」



ギクッ



私以外に聞こえない声で、さっきとは違う話し方のトーンで言われる。


何処か優しさが含まれた話し方の声のトーンが異性に対する恐怖感が一瞬解放されたように、


私の胸が


“ドキン” と大きく波打ち胸がざわついた。




「ほら! 彼女、大丈夫?」



と、眼鏡を拾ってくれた人が私の顔をのぞき込もうとするのと同時に裕斗君は私の頭をグッと抱きしめるように押さえた。


まるで隠してくれるかのように ―――




「見んなって!人前でキスしたから恥ずかしいんだって!女の子なんだから」



ドキン



≪えっ?……今……≫



「そりゃそうだ!」


「はい」


と、眼鏡を私に渡す裕斗君。



「す、すみません……ありがとうございます」

「いいえ。怪我してない?」

「はい」

「それなら良かった」


私は眼鏡を隠れるように掛ける中、裕斗君と普通に会話をする。




そして……



「……大丈夫?」

「えっ?」

「……いや……ちょっと……気になったから……」



私達にしか聞こえない声で言う裕斗君。



しかし、それ以上は何も聞く事も言う事もなく。



その後、私達は楽しんだ。

























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