第3章 13 実りある旅行の終わり
翌朝の明け方5時―
ルドルフは不意に目を覚ました。そして自分の腕の中でヒルダが気持ちよさげに寝息を立てて眠る姿を見て、どうしようもない位の幸せを噛みしめていた。
(僕は…昨夜ついにヒルダ様と結ばれたんだ。今まで生きてきた中で一番幸せだ…)
そして、眠っているヒルダにそっとキスをすると再び目を閉じた―。
それから約2時間後・・・
「ん…」
ヒルダはべッドの中で暖かな温もりを感じて薄目を開けた。すると眼前にルドルフの顔が有り、じっとヒルダを見つめている。
「おはようございます、ヒルダ様」
ルドルフはヒルダに挨拶をすると笑みを浮かべ、自分の胸に抱き寄せた。
「ル、ルドルフ…」
ヒルダは真っ赤になりながらもルドルフの胸に顔をうずめると言った。
「お、おはよう。ルドルフ」
ルドルフはヒルダを抱き寄せ、髪を撫でながら尋ねた。
「ヒルダ様…身体の具合はどうですか?」
その言葉にヒルダは昨夜の事を思い出し、顔が真っ赤になってしまった。
「だ、大丈夫よ。何とも無いわ…」
「そうですか。なら良かったです。」
そしてその後、2人はベッドの中で抱き合ったままキスをするとルドルフが言った。
「ヒルダ様、そろそろ…起きましょうか?」
そしてヒルダは黙って頷くのだった―。
ホテルのレストランでの朝食後、2人は紅茶を飲んでいた。
「この紅茶はカウベリーティーではないのね」
「ええ、そうですね。リンゴのような香りがします。リンゴの紅茶ではないでしょうか?」
「そうね…。ロータスでもカウベリーの紅茶は売っていないし…また飲みたいわ。お兄様にお手紙を書いてお願いしようかしら」
「エドガー様にですか?」
「ええ。あ、そう言えばね…お兄様にもクリスマスプレゼントを贈ったの。ルドルフと同じ万年筆だけど、お兄様のはガラスで出来た万年筆なのよ?」
「え?ガラスで出来た万年筆なんてあるんですか?どんなのか見てみたいですね」
「それなら…今度また2人でお、お出かけしない?万年筆を売ってるお店に案内してあげたいから」
ヒルダは顔を真っ赤に染めながら言う。
「え?ヒルダ様。それって…」
「あ、あの…デートの誘いなの…」
最後は消え入りそうな声だった。ヒルダはルドルフと深い関係になったにも関わらず、やはりシャイなところは変わり無かったのだ。
「嬉しいです。ヒルダ様から誘って下さるなんて…ロータスに戻ったら2人で沢山色々な処へ行きましょう。そしていつか、堂々とカウベリーの町に一緒に里帰りしましょう。僕…頑張りますから」
ルドルフはヒルダの手を握りしめると言った。
「でも貴方の気持ちは嬉しいけど…どうかあまり無理はしないでね?」
ヒルダの脳裏にはどうしてもあの老婆の言葉が頭から離れなかったのだ。だが、あの老婆の言葉が無ければヒルダとルドルフの恋人同士の絆が深まる事が無かったのも事実だった。
「はい。分りました」
ルドルフは笑みを浮かべて返事をすると、握りしめていたヒルダの手の甲にキスをした―。
****
その後、2人はチェックアウトを済ませるとノラが入院している病院に赴き、彼女が赤十字病院の迎えで病院に運ばれていく姿を見届けると馬車で駅に向かった。
駅に着くと、いつものようにヒルダを馬車から降ろすとルドルフは言った
「ヒルダ様、手紙をポストに入れてきますね」
「え?手紙?」
「はい、コリンに手紙を書いたんです。もし工場の仕事が辛いなら、オルゴール工房に転職を考えてみたらどうかと」
「そうね、きっと工場の仕事よりはいいと思うわ」
ヒルダはうなずく。
「ではちょっと行ってきます」
ルドルフは手紙をポストに入れるとヒルダの元へと戻って来た。
「では、『ロータス』へ帰りましょうか?」
「ええ」
そして2人は汽車に乗り…短い『ボルト』の旅行が終わった―。
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