第1章 18 あの時の謝罪

「あの教会の火事があった日・・・学校を出たらグレースさんから声を掛けられたの。私にきちんと謝って・・お友達になりたいって。他に3人、私と友達になりたい人達がいるから今から皆と会って貰いたいって言われたの。馬車を待たせてるから断ったけど・・グレースさんが伝えて来るって言って・・・私はこんな足だから速くあるけなくて・・止める事も出来なかったの。」


ヒルダの言葉はルドルフの胸を締め付けた。グレースは半ば強引にヒルダを連れ去ったと言う事が分かったからだ。


「そうだったんですね・・・。それで?続きを話して下さい。」


「ええ・・それで無理やり腕を掴まれて馬車に連れて行かれたの・・。私の歩くのが遅いからグレースさんをイライラさせてしまって・・正直、怖かったわ。」


ヒルダはギュッとテーブルの上で両手を握り締めると続けた。


「馬車が走り出してもグレースさんはずっと一言も口を聞かなくて・・それで思ったの。私と友達になりたいって話は多分嘘だったのだろうって。その内馬車はどんどん街から外れて行って・・・不安になって何処へ向かっているのか尋ねたら、教会だって教えてくれたの。そして着いた場所があの教会だったの・・。そしてグレースさんに馬車から降りるように言われて・・彼女の後に続いて教会へ入ったら・・。」


「そこに3人がいたんですね。イワンと・・コリン、そしてノラが・・。」


「私は・・・イワンさんしか名前を知らないけど、男の子2人と女の子が1人が教会にいたわ。そしてグレースさんに言われたの。ルドルフとは別れたのかって。」


「え・・?いきなりそんな事を言われたのですか?!」


「ええ・・そうなの・・。だから私は言ったわ、婚約破棄をしたし・・・その日以来私は一度もルドルフとは会っていないって。だけど・・信じてくれなかったの。」


「・・・。」


ルドルフは黙ってヒルダを見つめていた。


「ごめんなさい・・・ルドルフ。」


突然ヒルダが謝った来た。


「え・・?どうしたのですか?突然・・。」


「あの時・・薔薇園でルドルフに冷たい言葉を投げかけて・・沢山悲しませてしまったわ・・。ルドルフは・・私の事を愛してるとまで言ってくれたのに・・酷い事を言ってしまって・・。でも・・グレースさんに言われていたの。ルドルフとは恋人同士だったって・・酷く泣かれて・・貴方を返すように言われたの。その時に泥棒猫と言われて・・。」


「ヒルダ様・・・。」


「あの時・・グレースさんの言葉ではなく・・貴方の言葉を信じれば良かった・・。そしたらルドルフを・・こんなにも傷つける事も・・あんな事件が起きなかったかもしれない・・・。」


「ヒルダ様・・・それじゃ、やっぱりあの時の言葉は・・嘘だったんですね?婚約するなら本当に好きな人じゃないと嫌だと言ったことも、結婚するなら自分より爵位が上の相手がいいと言ったことも・・?」


「も、勿論よ。だって・・私が好きだった人は・・ルドルフだもの・・だから、あの時は本当に辛かったわ・・・。」


すると、ルドルフはテーブルの上に置かれたヒルダの手に自分の手を重ねると言った。


「ありがとうございます・・ヒルダ様。僕も・・・今も以前と変わらず貴女の事が好きです。・・愛しています。」


そしてヒルダの手の甲にそっとキスすると言った。


「ヒルダ様・・思い出すのは辛いかもしれませんが・・先ほどの話の続きを聞かせて頂いても宜しいですか・・?」


「ええ・・。」


ヒルダは顔を真っ赤に染めながら頷くと、続きを話し始めた―。







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