第11章 13 衝撃的な朝

 その日の朝9時―


静かなはずの片田舎、カウベリーで大事件が起こった。9時出初予定の始発の折り返し運転の列車が滑り込んできた時・・少年がホームに飛び込み・・死亡した。

少年の名はイワン。

この駅で清掃の仕事をしている、まだ17歳の少年だった。この少年の死は、あっと言う間にその日の内にカウベリー中に知れ渡る事となった―。



 それはルドルフが父と母の3人で食堂で朝食を食べている時だった。


ガラガラガラ・・・・


外ではひっきりなしに馬車の音が鳴りやまなかった。


「随分今朝は騒がしいな・・・。一体何が有ったのだろう・・。」


食後のコーヒーを飲みながら新聞を読んでいたマルコが窓の外を眺めながら口を開いた。


「ええ・・確かにそうよね・・。ルドルフ、ほらリンゴを向いたからお食べ。」


ルドルフの母がリンゴの乗った皿をルドルフに渡して来た。


「うん。ありがとう、母さん。」


ルドルフはリンゴを口に入れ租借しながら窓の外を眺めた時・・・。


ドンドンドンドンッ!


激しく扉を叩く音が屋敷に響き渡った。


「あら・・・?誰かしら・・こんな朝から。しかも随分切羽詰まっているみたいだわ・・・。」


ルドルフの母が立ち上がろうとしたところをマルコが言った。


「いや。母さん。私が出るよ。何やらただ事じゃない雰囲気だからね。」


マルコは立ち上がり、玄関へ向かうとドアを開けた。するとそこに立っていたのはマルコが管理している領地に住む中年の男性だった。


「おや・・・君は確か・・・。」


マルコが言いかけた時・・・。


「た、大変ですっ!テイラー様っ!今朝・・・カウベリー駅で電車の飛び込み事故があったんですよっ!し、しかも・・・飛び込んだのは駅で清掃の仕事をしていた少年らしくて・・・し、死んでしまったって・・・っ!」


「えっ?!」


騒ぎを聞きつけてルドルフが玄関へ駆けつけてきた。玄関へ現れたルドルフの顔は真っ青で血の気が完全に失せていた。


「ど、どうしたんだ・・ルドルフ・・・。」


マルコはルドルフのただならぬ様子に驚いて声を掛けた。


「ま、まさか・・・その少年て・・イ、イワンて名前じゃ・・・。」


ルドルフは震えながら報告に来た男性に尋ねた。


「あ・・ああ・・確かそんな名前だったような・・・。」


男性は首を傾げながら答えた。するとそれを聞いたルドルフはヘナヘナとその場に崩れ落ちてしまった。


「ど、どうしたんだっ?!ルドルフッ!」


マルコは慌ててルドルフに駆け寄ると声を掛けた。


「そ、そんな・・・イ、イワンが・・・死んだ・・・?」


するとマルコが何かを思い出したかのように呟く。


「うん?イワン・・イワン・・どこかで聞いたことがあるような・・。あ、もしかしてイワンて言うのは・・・?」


「イワンは・・・僕の・・・中学時代の・・友人だったんだ・・・。イワン・・どうして・・どうして電車に飛び込みなんか・・っ!」


ルドルフは激しく嗚咽し・・・最後に駅のホームであったイワンの事を思い出していた。


(あの日・・・イワンは酷く怯えていた・・・。その後にイワンはハリス様に手紙を・・それで僕とエドガー様がグレースの家に・・。ま・・まさか・・グレースと何かあったんじゃ・・・っ?!)


気付けば、マルコが領民と話をしていた。


「分った・・とりあえず列車の飛び込み事故で死亡なんて・・・カウベリーの駅が開設して以来初めての出来事だ。私はこれからフィールズ家に行って・・ハリス様に報告をして来る。」


それを聞いたルドルフが声を上げた。


「僕も!」


「「え・・?」」


マルコ達はルドルフを見た。


「僕も・・・フィールズ家に行く・・父さん、一緒に連れて行って下さい・・!」


ルドルフは涙を拭いながらマルコを見た―。

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