第7章 2 出来上がった写真
今日もヒルダはマドレーヌと一緒に仲良く歩いて帰宅していた。そしていつものようにヒルダの住むアパートメントの前で別れようとした時、ヒルダは言った。
「マドレーヌ。私、今日はこのまま写真屋さんへ行くの。だからもう少し一緒に帰れるわ。」
「え?ヒルダ。ひょっとして写真を撮ったの?」
「ええ、そうよ。」
「ねえねえ、その写真・・もしよければ私にも見せてもらえないかしら?」
マドレーヌはヒルダにお願いしてきた。
「ええ、いいわよ。それじゃ一緒に行く?」
「勿論よ。だって私の家は、その写真屋さんの隣にあるのよ。お隣はお菓子屋さんだったでしょう?」
マドレーヌの言葉にヒルダは1週間前の出来事を思い出していた。言われてみれば隣の店はお菓子の専門店だった気がする。
「そう言えば・・・そうだったかも・・。」
「ええ。そうよ。それじゃさっそく行きましょうよ。」
マドレーヌは笑顔で言う。
「そうね。行きましょう。」
そして2人は再び歩き始めた。
「あら・・見て、ヒルダ。この写真・・・貴女じゃないの?」
港近くの写真屋さんに着いた2人が店の前に立った時、マドレーヌはガラス張りの店内を覗きこむと言った。
「え?どういう事?」
ヒルダもマドレーヌの隣に立ち、ガラスケースの中に並べられている何枚かの写真の中で、一番目立つ場所に自分とカミラの写真が飾られていることに驚いた。
「まあ・・・本当だわ・・でもどうしてここに写真が飾られているのから・・?」
ヒルダは首を傾げた。
「あら?知らなかったのヒルダ。この写真屋さんはね、とても素敵に撮影出来た写真はこうやって店先に飾っておくのよ?ほら、見て。2人ともすごく綺麗に写ってるじゃないの。」
マドレーヌはキラキラした瞳で写真を見つめている。
「そ、そう?ありがとう。」
ヒルダは顔を赤らめながら礼を述べる。
「フフ・・。それじゃ一緒に写真屋さんへ入りましょう?」
マドレーヌはヒルダに言った。
「ええ。そうね。」
そして2人はドアを開けた。
カランカラン
ドア上部に取り付けられた銅メッキのドアチャイムが静かな店内に響き渡った。
「いらっしゃいませ。」
木製のカウンター越しに広い口髭を蓄えた白いシャツにエプロンをつけた老人が現れ、ヒルダを見ると目を見張った。
「これはこれは・・先週写真を撮られたお客様ですね。現像した写真を引き取りにいらしたのですよね?」
「ええ。そうです。ところで店先に飾られた写真ですが・・・。」
ヒルダが言うと老人は頭を下げた。
「大変申し訳ございません。勝手に飾ってしまいまして・・ただ、とても素敵な写真でしたので、どうしても町行く人々にも見てもらいたいと思って・・でも今日でこの写真も下げますね。」
老人はカウンタカーから出てくるとショーウィンドウに飾ってあったヒルダとカミラの写真を引き下げてくると、ほかの現像写真といっ所に封筒にしまい、ヒルダに手渡した。
「また、是非ご利用下さいね。お待ちしております。」
「は、はい・・。」
「それじゃ、行きましょう。ヒルダ。」
マドレーヌに促され、ヒルダとマドレーヌは店を後にした。
店の外に出るとマドレーヌが声を掛けてきた。
「ねえ、ヒルダ。私の家に寄って行かない?」
「ええ・・でもお夕食の準備があるの。」
するとマドレーヌが言った。
「あのね、実はうちの店は扱ってるのはスイーツだけじゃないのよ?」
「え・・?どういう事?」
「うちの店はね、おかずパイやおかずになるタルトも扱ってるの。よく失敗して売り物にならなくなったパイやタルトが食卓に出てくるのよ。ヒルダにもおすそ分けしてあげるから。」
「え・・でもそんな事してもらったら悪いわ。」
ヒルダが遠慮するとマドレーヌが言った。
「いいからいいから。ね?一緒に宿題でもやりましょうよ。」
そしてヒルダはマドレーヌに誘われるまま、彼女の家へお邪魔することになった―。
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