第6章 7 視線の先には

「そう、貴女マドレーヌって言うのね?とっても可愛らしい名前ね?」


ステラがマドレーヌに言う。

ここはカフェテリア。今ヒルダ達はランチを食べにこの店にやってきていた。

4人は丸テーブルに座り、それぞれ本日のおすすめのランチボックスに入ったサンドイッチのセットを食べている。


「ええ。私も自分の名前好きなのよ。すぐに皆に覚えてもらえるしね。」


マドレーヌはストロベリーのフルーツサンドをおいしそうに食べながら言う。


「実はね、私の家はスイーツ専門店を経営してるのよ。ここ『ロータス』では有名なスイーツ店なのよ?お土産としても人気がある店なのよ。」


「そうなのね。だからマドレーヌって名前にご両親はされたのね。」


マドレーヌの話に納得したかのようにエミリーはミルクを飲みながら言った。


「あら、見て。あそこにいるのはルドルフじゃないかしら?」


突如、マドレーヌは窓際を見つめると言った。


「え?ルドルフ?」


ヒルダも慌ててマドレーヌの視線の先を追うと、そこには数人の女生徒に囲まれるようにルドルフがサンドイッチを食べていた。女生徒たちは皆ルドルフに話しかけているが、一向にルドルフは気にも留めずに黙々と食事をしていた。


(ルドルフ・・・やっぱり・・貴方は変わってしまったのね・・。いいえ、きっとあんな風にしてしまったのは私・・・。でもどうして突然この学校にやってきたのかしら・・・?)


ヒルダはまさかルドルフが自分を追いかけて『ロータス』にやってきたとは夢にも思っていなかった。


「うわあ・・・かっこいい人ね・・・。」


ステラが感心したように言う。


「まあ・・確かにハンサムだけど・・でもヒルダのお兄さんの方が私はタイプだわ。ね、ヒルダはどっちがハンサムだと思う?」


エミリーに突然会話を振られてヒルダはドキリとした。


「え?わ、私・・・?」


「ええ、そう。ヒルダはあの人と、自分のお兄さん・・・どちらが素敵?」


エミリーは真剣な顔で聞いてくる。


「ねえ。ヒルダのお兄さんて・・そんなに素敵なの?」


マドレーヌが興味深げに尋ね来る。


「ええ。とっても素敵よ。ヒルダと同じ金の髪に青い瞳の・・それは素敵な人なの。」


エミリーはうっとりした目つきで言う。


「それで、ヒルダはどっちが素敵だと思うの?」


ステラの質問にヒルダは少し考えて言った。


「2人とも・・とても素敵で・・・私には選べないわ・・。」


俯き加減にヒルダは言う。


「そうよね~エドガー様はとてもヒルダを大切にしているから・・。ああ・・・私もヒルダみたいにエドガー様に大切にしてもらえたらな・・・。」


エミリーはうっとりした目つきで卵サンドに手を伸ばした。


「あ、そう言えば噂によるとあのルドルフって転校生・・夏休みに入ってすぐにこの学校の編入試験を受けたそうよ。それですべての教科が満点だったから特進クラスに入るのは決定済みだったんですって。」


マドレーヌの話にヒルダはエドガーの話を思い出した。


《 ヒルダ。俺の口から・・・詳しい事は言えないが新学期・・クラス分けテストがあるだろう?頑張って特別進学クラスに入れるように勉強頑張れよ?きっと・・良い事が起こるから。 》


(まさか・・・お兄様・・・ルドルフがこの学校に転入してくるのを知っていたの?しかも特進クラスに決まった事を・・・・。だから私に特別進学クラスに入れるように頑張って勉強するように言ったの・・?)


ヒルダはじっとルドルフの姿を見つめるのだった。そしてそんなヒルダを見ている人物がもう1人いた。それはマイクだった。

マイクはフランシス達のところへは行かず、ヒルダ達の後をつけてきたのだ。


(ヒルダ・・・あんなにもルドルフを見つめている。夏休み・・港でも名前を呼んでいたし・・恐らくあの2人は知り合いなんだ・・。でもその割にはどこかよそよそしいし・・きっとヒルダとルドルフの間には何かあるんだ・・・!)


マイクは思った。絶対に2人の秘密を暴いてやると―。

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