第6章 6 マイクへの警戒心
午前中の授業も終わり、昼休みに入った。生徒たちの大半はもうすでに食事をとりに教室から消えている。
(ステラやエミリー達は・・何クラスになったのかしら・・・。)
マイクによって、強引にこの教室へ連れて来られてしまったヒルダは彼女たちに挨拶をする事すら出来なかった。
ヒルダは教科書やノートをカバンにしまいながらぼんやりしていると、不意に肩を軽く叩かれた。振り向くとそこに立っていたのはマイクだった。
「ヒルダ。僕と一緒にカフェテリアへ行こうよ。今日は2人が特進クラスに入ることが出来たお祝いに僕がヒルダの好きなものを何でもご馳走してあげるよ?」
するとマーガレットが口を挟んできた。
「あら、それは素敵ね。それじゃ私も是非ご一緒させてもらおうかしら?当然私もおごってもらえるのよね?」
「え・・・?な、何故僕が君の分まで・・。」
マイクが言いかけた時、教室の外からヒルダを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ヒルダーッ!」
そこに立っていたのはステラとエミリーだった。
「ステラ、エミリー。」
ヒルダが呼ぶと、彼女たちは教室に入ってきた。
「やっぱりさすがはヒルダね。特進クラスに入れてしまうんだから。」
ステラが言う。
「うん、うん。さすが私たちのヒルダだわ。」
エミリーが相槌を打ち、背後に立っていたマイクに気付く。
「あら・・・・?マイク。こんなところで何しているの?まさか・・・ヒルダを食事に誘おうとでも思ったの?」
「あ、ああ。当然じゃないか。だって僕とヒルダは友達なんだから。」
マイクの言葉にエミリーは言った。
「あのねえ、ヒルダが貴方とも一緒にいたのはフランシスがそこにいたからよ?もともとヒルダと友達だったのはフランシスだったんだから。でも、もうフランシスはこのクラスにはいないわ。だからマイク、貴方はもうヒルダに近づかないでよ。大体貴方はヒルダに乱暴よ?強引に腕を引っ張ったり・・・。」
「え?僕が乱暴?まさか・・・。」
マイクの言葉に今まで黙って事の成り行きを見届けていたマドレーヌが口を挟んできた。
「ええ、そうよ。マイクはヒルダに乱暴が過ぎるわ。今朝だって嫌がるヒルダの腕を無理やりつかんで立たせて教室の外に連れ出して行ったのよ?」
「え?ヒルダ!その話・・・本当なのっ?!」
ステラが顔色を変えてヒルダに尋ねた。
「え、ええ・・・そうなの。」
ヒルダは立ち上がり、さりげなくステラの背後に隠れた。
(私は・・・マイクが怖いわ。お兄様にもマイクには気を付けるように言われていたし・・。)
「ヒルダッ・・・!」
マイクは悔しそうに唇をかみしめた。
(どうして・・?どうしてヒルダはこの僕を・・拒絶するんだ?)
「ほらみなさい。ヒルダ・・・マイクを見て震えてるわ。かわいそうに・・・。貴方はフランシス達とお昼を食べてくればいいじゃない。フランシス達は『大食堂』に行くと言ってたわ。今から急いでいけば、まだ3人に間に合うんじゃないの?今度からヒルダは女子だけで食事に誘うから、もう貴方は二度とヒルダを誘わないでね。」
「わ・・・分かったよ、僕は・・もう行くよ。」
マイクはヒルダ達に背を向け出入り口へ向かい・・・途中で振り向くとヒルダに声をかけた。
「ごめんよ、ヒルダ。僕は君に乱暴するつもりは・・・これっぽっちもなかったんだよ。」
「・・・。」
しかしヒルダは俯いたまま、返事をしない。
「・・・。」
マイクはヒルダのその様子を見て落胆した気持ちで教室を出て行った。
(何だよ・・・皆して僕をヒルダから遠ざけようとして・・・!)
マイクはイライラしながら食事へ向かった。どうすればヒルダの警戒心を解き・・・2人きりの時を過ごすことが出来るだろうと考えながら―。
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