第4章 8 青い海と少年たち

 その頃、フランシス達は波止場で釣りをしていた。


「ちぇっ!少しも魚が釣れないぞ!」


フランシスは餌だけ取られた釣竿を悔しそうに眺めると言った。


「俺は2匹連れたぞ!」


ルイスは自慢げにブリキのバケツを自慢げにフランシスに見せる。そこには小さな魚が2匹泳いでいた。


「何だよ、随分小さい魚だな。こんなの他の魚のえさにしかならないよ。俺の釣ったものを見てくれ!」


自慢げにカインが2人に見せたのは・・・・。


「ウニ・・・。」


ルイスが言う。


「うん、ウニだな。」


フランシスは頷く。


「おい、カイン。お前、ウニなんかどうやって取ったんだよ?」


「どうせ偶然釣竿に引っかかったんじゃないのか?」


ルイスとフランシスが交互に言う。


「う・・うるさい!ウニは高級なんだぞ?一匹も連れないフランシスや小魚しか連れないルイスと一緒にするな!」


カインは顔を真っ赤にして怒っている。



「・・・・・・・。」


そんな3人を遠巻きに、1人マイクは小さな折り畳み椅子に座り、港で写生をしていた。


「全く騒がしい奴らだ・・・まるで子供みたいだな。」


そして溜息をついた。


「はあ・・・・ヒルダが来ていれば・・・島の絶景ポイントに連れて行ってあげたのに・・・。」


その時―。


ボ-ッ・・・・


汽船の音が海から聞こえてきた。


「あ・・・蒸気船の音だ・・・観光船が来たのか。どいた方がいいな。」


マイクは椅子を畳み、手に持つとフランシス達の元へと向かうと言った。


「観光船がもうすぐ波止場にやってくる。一度どいた方がいいよ。」


「観光船?」


フランシスが尋ねた。


「ああ、1日に数回来るんだ。今の時間は第一便だな。」


言っている傍から白い蒸気船はどんどんこちらへ向かって進んでくる。


「へえ~・・・綺麗な蒸気船だな・・・。」


カインはまぶしい日差しを右手でかざしながら言う。


「どんな客が乗ってるのかな?」


ルイスが興味深げに蒸気船を見つめている。


「よし、それじゃ、降りてくる乗客たちの邪魔にならないように後ろに下がっていようぜ。」


フランシスの言葉に少年たちは後ろに下がって蒸気船が停泊するのを待った。

やがて船は大きな汽笛を鳴らし、港に停泊すると係員たちが集まり、蒸気船から降ろされたロープで船を固定し、次々と船から乗客が降りてくる。乗客たちは老若男女を問わず、様々な人々が桟橋に姿を見せた。


「へえ~・・・ずいぶんたくさんの人たちが乗っていたんだな・・・。」


フランシスは感心したように言い・・・次の瞬間、少年たちは目を見張った。

何とヒルダが金の髪の美しい青年に抱きかかえられながら蒸気船から降りてきたのであった―。





 それは蒸気船から降りる直前の事―


「お兄様、一人で歩けますから降ろしてください。」


ヒルダはエドガーに蒸気船の中で抱き上げられながら言う。

しかしエドガーは首を振った


「ヒルダ。船の中は揺れるんだ。その足で歩いて転んで怪我でもしたりしたら俺はカミラに申し訳が立たない。船から降りたら降ろすからじっとしていろよ。」


「で、ですが・・・。」


するとエドガーは笑いながら言う。


「ヒルダは軽いなあ。もっと食事を取った方がいいぞ?こんなに痩せていたら母が心配してしまう。」


「お、お兄様・・どうかお母様には言わないで下さい。」


ヒルダは懇願した。


「黙っていて欲しければじっとしていな。」


そこまで言われればヒルダはおとなしく抱きかかえられるしかなかった。

やがてヒルダを抱きかかえたままエドガーが桟橋に降りると、ヒルダを地面に降ろした、その直後―。



「「「「ヒルダーッ!!!」」」」


桟橋に向って駆け寄ってくるフランシス達の姿がヒルダの目に飛び込んできた―。



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