第4章 3 大事な来客
良く晴れた土曜日の午前10時―
マイク、フランシス、ルイス、カイン。そしてステラにエミリーはそれぞれ大きな旅行鞄を持ってロータスの港へ集まっていた。
「すっげー。この船に乗ってこれから俺達は島へ向かうのか!」
まるで子供の様にはしゃぎながらカインは興奮を隠せない様子で船を眺めている。
「マイク、釣り道具はちゃんとあるんだろうな?」
ルイスがマイクに質問している。
「もちろんだよ。人数分ちゃんと用意してあるよ。」
「ねえ、私たちは釣りをするつもりはないんだけど・・・?」
ステラが言うとマイクは笑みを浮かべた。
「別に無理に釣りをする必要はないよ。島は綺麗な白い砂浜だから貝殻も沢山落ちているし。他にも島には見どころが一杯だよ。」
「本当?それじゃ私は貝殻を拾い集めて持って帰りたいわ!」
綺麗なものが大好きなエミリーは頬を染めながら言う。そんな中、ため息をついているのはフランシスだ。
「ヒルダ・・・。ヒルダも一緒に島に行けたら良かったのに・・・。」
そこへステラがフランシスに言った。
「仕方ないわ・・・。大事なお客様が来るって言ってたから・・。でも、大事なお客様って一体誰のことなのかしら・・?」
「そうよね、誰なのって尋ねてもヒルダは答えてくれなかったし・・。」
カフェテリアでの話を思い出しながら話に加わって来たエミリーは首を傾げる。
そんな彼らの会話をマイクは黙って聞いていた。
(きっとヒルダの話していた大事なお客っていうのは・・ヒルダの親戚か何かに違いない・・。こんなことなら別荘の話なんかしなければ良かった・・。そしたら何気ないふりをしてヒルダの住むアパートメントへ押しかけて大事な客とやらを拝ませて貰えたのに・・・。)
そしてマイクは心の中でため息をついた―。
ヒルダとカミラはこれから大事なお客を迎える為に準備をしていた。部屋を綺麗に片づけ、お茶菓子の準備をしながらヒルダはずっと緊張していた。そんな様子のヒルダに気が付いたのか、カミラが声を掛けてきた。
「ヒルダ様・・・大丈夫ですか?」
「え、ええ・・。大丈夫よ・・。少し、緊張しているけど・・。」
「それにしても・・・あまりにも突然のお話でしたよね。今まで一度もこちらの事を気に掛けた事など無かったのに・・しかも私たちの都合を聞かずに強引にですから。」
「・・・仕方ないわ。だって・・・彼は・・いくら養子になったからと言っても正式なフィールズ家の跡取りになっている人なのだから・・。」
ヒルダは悲しげに言う。
そう、実はヒルダの語った大事なお客というのは、父ハリーがヒルダを絶縁した後に遠縁の親戚から養子に貰った少年の事だった。勿論ヒルダもカミラもこの少年とは初対面である。
「それにしても旦那様は酷いです。よりにもよってヒルダ様と1歳しか年の違わない青年を養子縁組するなんて・・・。あ、すみませんっ!」
カミラはヒルダが悲し気な顔を見せているのを知り、慌てて口を閉ざした。
「いいのよ、カミラ・・・。私はお父様には捨てられた身。何も言える立場ではないのだから・・。」
するとその時―。
コンコン
ドアノッカーが叩かれる音が聞こえた。
「あ!噂をすれば・・・ですね。例の青年では無いですか?どうします?ヒルダ様。私が対応しましょうか?」
カミラの言葉にヒルダは首を振った。
「いいえ、カミラ。私が出るわ。彼は・・・私に会いに来たのだから。」
そしてヒルダは足を引きずりながら玄関へ行くとドアを開けた。
するとそこには背の高い、金の巻き毛に青い瞳の若者が立っていた。そしてヒルダを見下ろすと言った。
「こんにちは。君がヒルダかい?へえ~・・・これは驚いたな・・。やっぱり噂通りの美人だ・・。初めまして。俺はエドガー・フィールズ。年齢は17歳。フィールズ家の跡取り息子さ。よろしく、ヒルダ?」
そして何処か意地の悪そうな笑みを浮かべた―。
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