第3章 7 命令
ここはルドルフの家―
マルコが家の裏手で土地を耕しながら、ため息をついていた。
ヒルダが落馬した翌日、マルコとルドルフはハリスに呼び出され、激しく叱責された。挙句の果てにヒルダに大怪我を負わせた罪で仕事をクビにされてしまったのだ。
マルコとルドルフは必死で謝罪したが、結局許しを得る事は叶わなかった。
そしてマルコは新しい仕事を探していたが未だに決まらず、こうして家の空き地を耕して畑仕事をしていたのである。そして収入は妻が村の食堂で働いた賃金を頼りに一家は何とか暮らしていた。
何度目かのため息をついて畑仕事をしていた時・・・マルコの家に馬車がやって来て家の前で止まった。
「え・・?あの馬車は・・・?」
マルコは驚いて駆け寄るとドアが開き、中からハリスが現れた。
「だ、旦那様・・・。」
するとハリスはマルコを見ると言った。
「マルコ、お前に大事な話がある。」
その頃ルドルフは学校が終わり、グレース、イワン、トム、ノラと一緒に家路に向っていた。
「ねえ、ルドルフ・・・。おじさまはまだ仕事が決まらないの?」
ノラが心配そうに尋ねて来た。
「うん・・・そうなんだ。」
ルドルフは悲し気に言う。
「全くそれにしてもフィールズ家の人間は酷いわね。ヒルダ様が怪我をしたのはルドルフのせいじゃ無いのに。」
グレースはイワンを見ながら言う。するとイワンは肩をビクリと動かした。
「よせよ、グレース。そこまでにしておけ。」
トムは威嚇するようにグレースを見た。
「あら、それは悪かったわね。」
グレースはツンと上を向いた。
(大体・・あの貴族令嬢が怪我をした本当の責任は・・・グレース、お前だろう?)
トムは心の中で思った。最近のグレースはおかしい。ルドルフに恋するあまり、狂暴になってきたようだ。どこか危険性を感じるようになってきたのだ。
「まあ・・・早くおじさまの仕事が見つかる事を皆で祈っていましょう?」
そしてノラは上手くその場をまとめてこの話はお開きとなった―。
「ただいま・・・。」
ルドルフが力なく家に帰宅すると、突然マルコがルドルフに抱き付いて来た。
「ルドルフッ!!聞いて喜べっ!」
「わぷっ!な、何っ?!父さんっ!」
するとマルコはルドルフの両肩に手を置き、瞳を覗きこむように言った。
「旦那様が・・・ハリス様が私達を貴族にしてくれたのだよっ!そして僅かだが・・領地もわけてくださったのだっ!今日から私たちは男爵家になり、我らの苗字はテイラーになったのだよ!」
「え・・・?貴族に・・?」
ルドルフはわけが分からなかった。ヒルダに大怪我を負わせ、仕事もクビにされたのに。何故そのような話になるのか、全く理解する事が出来なかった。
「落ち着いて、父さんっ!で、でも・・何故そんな話になったの?!」
ルドルフは驚いて尋ねると父は答えた。
「ルドルフ・・・それは私も話を知らないのだよ。ただ、すぐにハリス様の屋敷へむかって貰えないか?旦那様がお前をお呼びのだよ。」
30分後―
ルドルフは緊張の面持ちでハリスが現れるのを通された部屋で待っていた。
するとハリスとマーガレットがドアをカチャリと開けて中へと入って来た。
「旦那様、奥様っ!この度は申し訳ございませんでしたっ!」
ルドルフは立ち上り、頭を下げた。
「まあいい、座り給え。ルドルフ。」
ハリスとマーガレットはルドルフの向かい側のソファに座ると、ルドルフにも席に着くよう促した。
「は、はい。」
ルドルフはかしこまりながら席に座った。
「実は今日お前を呼んだのは他でも無い。ルドルフ・テイラー。お前は今日から我が娘、ヒルダ・フィールズの婚約者となるのだ。お前には娘に怪我を負わせた責任を取って貰うっ!」
ハリスはルドルフを指さしながら険しい顔で命じた—。
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