タイトル

シダ

第1話 「スピーチどうするよ?」

「 僕はロリータコンプレックスです!!!!」

クラスの奴らに汚物を見るような目で見られて、先生に至っては「こんな中学生が居るの…」とドン引きをしていることだけは肌で感じることができた。

ま、まあ、何事もやってみないとわからないこともあるかもしれないし…

もしかしたら、まともな感性の能力を持っている人がこのクラスにも数名いるはずだから、話しかけに来てくれるかもしれない。

笑みを引きつりながらセールスマンのように流暢に話しを続けた…





まだ桜が桜というピンク色の花びらを木に身に纏っている4月中旬…

中学三年生になったからなのか自己紹介という名の最初で最後の見せ場が何故か消えていて、新学期だというのにすぐ授業が始まるという謎のルールが出来ていた。

周りの奴ら(陽キャ、運動部に所属しているチンパン)は「意味わかんないんだけど―」「遂に学校側も気が狂っちまったのかなぁ」「入る学校間違えたかな」等のよくわからない発言をクラス内で動物の群れのように固まりながら喋っている。

まあ、一人でいるのが好きな僕からすれば自己紹介なんてないほうが有り難いのだが…なんだろう、この気持ち。

やはり、毎年毎年やってきた事ということもありムズ痒い。

生まれて初めて、自己紹介の重要性に気が付いてしまったかもしれない。

まあ、今度する時があれば思いっきり自分の全てをさらけ出したいと心の中で誓った。

―――数日後…

現国の授業のことだった…

「えーと、それでは1分間スピーチをこれからみんなにやってもらいたいと思います」

優しそうな見た目で、猫耳を付けたら凄くかわいい女の先生なのに、放った言葉は容赦なかった…

えええええええーーーー!?

クラス一同が奇声の混じった声で発狂をした。(これがハモるってことなのか)

くっそ、自己紹介をしなかったのはこのためだったのか。

というか、1分間も何を喋れっていうんだよ。

最高学年ってこんなこともしないといけないのかよ。

「で、でもみんな!発表は来週だからじっくり考える時間はあるから大丈夫」

そういう問題じゃないのだが…

時間があってもスピーチというものは何が起こるかわからない。

教壇に立つと頭が真っ白になるかもしれないし、大きな声で喋れるかもわからないし、噛み噛みになるかもしれない。

クラス中が頭を抱えながら一心不乱にスピーチの事を考えている中、この現国教師は爆弾を放った。

「あ~~~っ思い出した!このスピーチ成績に入るから頑張ってね」

テヘッ★みたいな表情をしながら言うものだから批判しようにも喉が機能しない。

と、キーンコーンカーンコーンと授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いて、現国教師は何事もなかったかのように立ち去っていった。

どうしよう、どうしようと頭を抱えてうずくまる奴が一名。

でかい声で奇声を上げるサルが一名。

テストよりも対策が必要だなと頭を悩ませるコミュ障な天才が一名。

クラスはカオスと言う名の混沌とした状況に変貌を遂げていたのである。

まあ、俺も状況を今一つ理解できていないのだが…

そして、ため息をつく。

「はぁ~~~っ」

「どうした、変態。ため息なんてついて」

こいつは戸川とがわ、眼鏡をかけていて数学なら偏差値60後半ぐらいある変人(ほかの教科は……察してやってくれ)。小学校からの付き合いのある俺と似た系統(ボッチ)の男だ。

「その呼び方やめろって言ってんだろうが」

鬼の形相で睨めつけたが、何も動じないどころかこの状況を楽しんでやがる。

「で、なんだよ下衆」

「お前もその呼び名やめようぜ、な?お互い様だろ。もう、賭けの話は無かったことにしようぜ」

「俺も、出来ればそうしたいけどしょうがないじゃん。決めたことだし…」

あれは、部活で起こった遊びのゲームだった…

文芸部という幽霊部員が集いに集った何もすることがない部活に俺たちは属している。

しかし、3年生ともなると内申点などを本格的に考えないといけないため、他の部活に乗り換えるのは色々と面倒なので(コミュ障だから言えない)、この部活で何かしようと二人で考えた結果…

ボードゲームやトランプ、UNO、人生ゲーム等の暇つぶしゲームをすることに決まった。

それだったらボードゲーム部作ればいいじゃん!って話なのだが、それは不可能に近い。

なぜなら、

其の一 部員が集まらない

其の二 頼れる教師もいない

其の三 コミュ障

結論―――暇つぶしに何かしよう。

これが俺たちが導き出した答えだ。

と、そんな話じゃなかった。本題に戻ろう。

トランプの大富豪をすることになったのだが、普通にやっても面白くないため(二人の大富豪の時は相手の手札がわかるから)罰ゲームを決めてやることにした。

「よーし、やるかぁ」

気合を入れるために腕をまくった。

「負ける気がしないな」

眼鏡をクイッと上げて俺たちは真剣なモードに入るための準備を整え始める。

首を回したり、深呼吸をしたり等…

器用なカードさばきで配り始めた戸川なのだが、やはり罰ゲームの事を考えると息が詰まりそうになるのもわかる。

なんせ、罰ゲームは陽キャとかがよくやってるあだ名である。

まだ、名前に関係するあだ名ならましだが、名づけらえるのがこいつだからな…

――――

結局10戦して5勝5敗になった。

最初は1回で決着するはずだったのが、3回、5回、…

気づいたらどんどん勝負の回数を増やした結果である。

終業の放送がかかったため、ここで手を引こうという考えにはお互い合意できた。

しかし……罰ゲームどうしよう…

後日するってのもいいけれど、あだ名が永遠に決まらなそうに感じたため、お互いにあだ名をつけることで同意した。

ついたあだ名は僕は変態で、戸川は下衆になったわけだ。


「で、どうするよスピーチ。何か決めたのか?」

と、その時。

―――変態の頭に電流が走る。

「ふっふっふっふっふっ…」

「ど、どうしたよ」

若干引いている戸川の対応はあまり気にしない方向性で行こう。

「後でのお楽しみだよ」

「へー、お前にしては珍しいな」

「ああ、とっておきの機会だからちょっと試したいことがあるんだ」

「まあ、どうせロクでもないことだとは思うけどな」

お前に言われたくないなと内心思ったが、今は自分のスピーチの事の妄想(脳内)で忙しいため、どうでもよく感じられた。

「まあ、本番を楽しみに待ってろって。俺のスピーチが上手くいけばクラスの奴らも未知の領域に踏み込まざるをえないと思うぜ」

精々頑張れよーっと、どうでもよさげに戸川が返答をすると2限目の始まりのチャイムが鳴った。

「あっ!!!、次の授業体育だった…」

「やっべ、また怒鳴られるわ」

「だって、体育のかど先生ってヤクザみたいな顔してるサッカー部の鬼顧問だぜぇ」

「それなら、俺たちが取る手段は一つのみ…」

その後、俺たちは二人そろって門先生に土下座をした。(自主的に)























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