疑いばっかり

羽衣石ゐお

第1話 男としての【私】

 【私】は「男として生を賜った」わけであるが、この事実をすッと嚥下してしまうことは、果たして今になっても叶わないことである。

 幼年の頃は、まことに愛らしく、女物の服ばかりを好んで身に着けていたらしい(とりわけ似合ったのは赤のチェックのスカアトだった)。また髪も現代風に云えば「ボブヘア」で、目もくりっと真ん丸であった。

 そういった美貌が、跳び箱からの転落事故で失われてしまったわけだが、私は私のままであったことが、幸か不幸であったのか……。というのも、私がただ外見を女のようにしたかったばかりではなく、核としても、どこか女でありたかったように思える。今でも、思うことがある。ただそれは、社会的だとか、生物学的な「男」であることを厭ってのことかもしれない。

 ただ昔から変わらず思っていたのは、愛らしさだとか、美しさを得ることだった。かけっこよりも、ままごと遊びの方を何の気兼ねも無く遊んでいたかった。

 もう一度、幼年の頃のように愛でられたいだなどと、本気で思っているのかは、自分でもわからない。

 ただ私は、私に「男」というものが偏在することなどあって欲しくないのである。

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