疑いばっかり
羽衣石ゐお
第1話 男としての【私】
【私】は「男として生を賜った」わけであるが、この事実をすッと嚥下してしまうことは、果たして今になっても叶わないことである。
幼年の頃は、まことに愛らしく、女物の服ばかりを好んで身に着けていたらしい(とりわけ似合ったのは赤のチェックのスカアトだった)。また髪も現代風に云えば「ボブヘア」で、目もくりっと真ん丸であった。
そういった美貌が、跳び箱からの転落事故で失われてしまったわけだが、私は私のままであったことが、幸か不幸であったのか……。というのも、私がただ外見を女のようにしたかったばかりではなく、核としても、どこか女でありたかったように思える。今でも、思うことがある。ただそれは、社会的だとか、生物学的な「男」であることを厭ってのことかもしれない。
ただ昔から変わらず思っていたのは、愛らしさだとか、美しさを得ることだった。かけっこよりも、ままごと遊びの方を何の気兼ねも無く遊んでいたかった。
もう一度、幼年の頃のように愛でられたいだなどと、本気で思っているのかは、自分でもわからない。
ただ私は、私に「男」というものが偏在することなどあって欲しくないのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます