第7話 夢遊

最近、寝る前にSSを書こうとしているのだが

書いた記憶のない内容が書かれていて、どきりとする。


おそらく睡眠薬のせいで睡眠前の記憶の一部が抜け落ちているのだろうが

ここから続きを書こうと思って閉じていたのに

いつの間にか起きてすでに続きが書いてあるというのは不思議な感じだ。

まるで妖精でもいるかのよう。間違いなく書いているのは僕なのだが。

夢遊病というか、一種の健忘症なのだろう。


どうせ記憶に残ってもいないし、いっそこの僕の抜け落ちた記憶の彼が

すらすらと書き上げてくれたらいいのにと思う。

といっても大した成果にはならないのだが。

ちなみにこれを書いている僕は、普通に起きているのでそういうことはない。


とはいえ、自分が記憶している範囲外で何かをしていることは間違いないのだから

もちろん不安もある。というか不安しか無い。普通に怖い。

SSを描き続けてるだけならいいが、急に起き出したりして

何か良からぬことをやっていないかと不安になる。


それもそのはず、LINE中に寝落ちしたときの文面が

なかなかカオスだったのを覚えている。

僕のことを理解している友人だったから良かったものの

発言を記憶していないというのは、怖いものである。


意識が落ちる直前は、文にもならず、解読するのにやっとな文章で

曰くぼやけた視界で打っているのだと友人に伝えていた。

けれど数分もした後に、意識の外の僕が現れて

何もなかったかのように会話を続けているのだ。


まるで僕が二人いるような奇妙なこの状況は

もちろん意識の外側にいる僕には伝わらなくて

ただ普段の僕が困惑しているだけのようだ。


誰にだって仄暗い部分はある、僕はそれが外に出ないことを祈るしか無い。

今日も耳鳴りが響く。

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