その後の世界

 私は目を閉じてしまい、苦しむそぶりを見せなくなった華奈から視線を外し、ふうと息を吐いた。

 すぐに起き上がると思ってたけど、流石にちょっと時間がかかるかな。

 私はまた華奈を見下ろした。

 見ただけではどこにでも居そうな普通の女の子なのに、幼い頃から十数年間、華奈の中では想像も出来ない程に入り組んだ意思と感情が入り混じっていたなんて。

 未だに信じられない。

 その時、華奈の瞼が震えた。

「おはよ」

 華奈の瞼が開かれて、ぼんやりとした瞳が覗く。何度かパチパチと閉じては開くを繰り返したあと、ゆっくりと上半身を起こして言った。

「おはよう、亜希ちゃん」

「……やっぱりちゃんがつくのは完全に華奈のときみたいだねぇ」

「そうみたい。なんでだろうねぇ」

 2人でクスクスと笑い合う。

「偽物は消えた?」

「うん。いつもの感覚がないもん。それより、無理なお願いしちゃってごめんね」

「ううん、大丈夫よ。だって私」

 にっこりと笑って口を開く。

「心理カウンセラーになりたいんだもの。困っている人がいたら助けるわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

偽物 陰陽由実 @tukisizukusakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ