桃太郎 THE・darkness!!
こば天
第1話 はじまり
昔、昔、あるところに。
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに。
おばあさんは川へ洗濯をしに行きました。
「ったく、なんでわしが洗濯んぞせにゃならんのじゃ!川の水は冷たいし。うわっ、またじじいのふんどしにクソついとる。はやく死なんもんかのー」
おばあさんには心の洗濯が必要なようでした。
そのころ、山では。
「しばかりってなんじゃぁー?山に芝があるのかのぉー?わしゃいったい、いつまでこれをやればえーんじゃー?やる意味はあるのかのぉー?ここはどこじゃー」
おじいさんの脳みそのしばはだいぶ枯れていました。
「じじいの介護なんてまっぴらじゃ!最近、飯は良くこぼすしトイレは汚すし。やつを○すいい方法はないもんかのー」
おばあさんが他人には絶対に聞かれてはいけない愚痴をこぼしつつ、ふんどしのくそを落としていると。
どんぶらこ、どんぶらこと、大きな桃が流れてきました。
「・・・・桃、でかっ!!!」
おばあさんは川に飛び込み、得意のバタフライで桃に近づき、川から桃を引き上げました。
おばあさんは若い頃、水泳で名を馳せた美女スイマーで、将来を約束されていたのですが、妻子あるコーチとの肉欲に溺れてしまい、そのことがきっかけで水泳界にいられなくなった過去があったのです・・。
水中では一度も溺れたことがなかったのに、優しく頼りがいのある年上の指導者との蜜月という名の愛の海では呼吸すら忘れて溺れてしまい・・・・・。
「桃じゃ桃じゃっ!このでかい桃を道の駅で売りさばけばいい金になるじゃろ!インスタにあげればバズりはまちがいなしじゃて!これでわしは人気者じゃ!」
おばあさんは我欲にまみれていました。
体はずぶ濡れ、心は乾いていました。
そのころ、山では。
「ばあさんやー、飯はまだかのー?ここはどこじゃー?しばってなんじゃー?」
おじいさんにかれるものは、もはやなにもありませんでした。
おばあさんは桃を持ち帰り、さっそくインスタにupすることにしました。
川で拾った桃、まじぱねー☆
おばあさんと大きな桃の自撮りは、そこそこのイイネをもらえました。
コメント欄には『桃、まじでけー』『桃、でかすぎ』『この桃、まじいけてんじゃん』と頭の悪いコメントで溢れました。
承認欲求を満たされたおばあさんは満足し、桃を売り払うべく愛用のランドクルーザーに桃を積み込んで道の駅へとむかいました。
そのころ、山では。
「雨が降ってきたのー、こりゃいかん、うちに帰らねばー。うち、うち・・・ここはーどこじゃー」
雨など降っては降りません。
濡れているのは、おじいさんのズボンだけでした。
おばあさんの洗濯物が、また増えてしまいました。
そのころ、道の駅では。
「こんなでかい桃、うちじゃあつかえないよ!君の悪い・・・さっさと持ってかえってくれ!」
「なんじゃその言い方は!買い取る金もないのかい、この貧乏人め!こんなとこ、二度と来るもんか!」
おばあさんは悪態をつき、道の駅に並べられている商品をわざと倒して去っていきました。
おばあさんは、町一番の嫌われものだったのです。
桃を持ち帰ったおばあさんですが、イライラがおさまらず、そのイライラを桃にぶつけました。
「あのくされ×××野郎、地獄に落ちろ!なにが買い取れないだ、貧乏人が!」
おばあさんは悪態をつきながら、大きな桃を出刃包丁で切りつけ始めました。
「死ねばいい、みんな死ねばいい!わしのインスタにイイネしないやつは死ねばいい!」
おばあさんの目は血走り、くちからはよだれをたらし、一心不乱に桃を・・・。
出刃包丁を突き刺し、えぐり、切りつけ、何度も刺して刺して刺して刺して刺して刺し刺して刺して・・・。
そのころ、山では。
おじいさんもよだれをたらし、ただただ一点を見つめて、立ったまま呆けていました。
おじいさんのズボンの染みは広がる一方で、おばあさんの洗濯物も増える一方でした。
飽きることなく出刃包丁を振りつづけるおばあさん。
ふと、おばあさんは桃のなかに空洞があるのを見つけました。
「何かあるね・・金目のものかい?川から流れてきた大きな桃だ、不思議な桃だ、宝のひとつやふたつ・・・」
目を¥に輝かせるおばあさん。
桃の中に入っていたのは、可愛らしい男の子の赤ちゃんでした。
「なんだ、ただのガキじゃないか!こんなもんいらないよ!期待して損した!」
おばあさんは人として最低でした。
しかし、ここでおばあさんはあることを思い付きました。
これは使える・・・と。
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