第5話 お墓参りと駐車場
祖父母の墓地のすぐ傍の、国道に面した一角に駐車場がある。
墓地とは関係ない駐車場にも拘わらず、午前中か開放してくれていたが、今年に入ってから、お客様以外の一切の駐車が禁止となった。
(コロナの影響かな?)
その駐車場は国道を挟んだ向かいにある、十七時から開店する個人経営の居酒屋の持ち物だった。
「お金にならない人には使わせたくないのだろ?」
なんて言う人もいた。
なんせその墓地には駐車スペースが少ししかない。
母(墓は母方の祖父母なのだ)を連れて行くわたしが、路肩に寄せ、ハザードランプを点滅させて待つ形になるのだが、ある時、店から出て来た店主らしき人が、
「本当にお墓参りなら、駐車場に止めていいよ」
と言ってくれた。
悪いうわさも小耳にはさんでいたわたしは遠慮したのですが、わたしの態度で感づいたようだ。
「以前はここ、午前中に限り開放していたんだけど、その内、極一部の人が時間を過ぎても放置し、ある時、店のお客さんの車をぶつけて逃げてしまったんだよ」
店主は苦笑いを浮かべてそう語った。
(そうだったのか)
善意で始めた好意をそんな形で返されたら、誰だってそうしてしまうと思った。
「それじゃお借りします。ありがとうございます」
わたしが笑顔を以て好意に甘えると、店の主人もようやく笑顔を見せてくれた。
きっとこの人は、墓参りの人も、お店のお客さんも、どちらも利用できる駐車場にしたかった筈だ。
善意の代償が言われない陰口ではたまったものではない。
墓参りの後、まだ準備中のお店に顔を出してお礼を述べると、ご主人は
「これからも利用してね」
と言ってくれた。
わたしはそれを真に受けて、これからも利用させてもらおうと思う。借りる時にはちゃんと挨拶を忘れずに。
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