角ばらない世界
ばば
第1話 起床
6月30日の朝
聴き慣れた電子音が部屋中に鳴り響いた。
慣れた手つきでアラームを解除して再び目を閉じる。
午前8時30分のお知らせは二度寝の合図だった。
アラームが鳴ってから20分経ってやっと体を起こし、リビングへ向かう。
今日は可燃ゴミの日だ。アラームが鳴った時点で手遅れだということは知っていた。
それでも普段より早く目が覚める姿を毎回期待している人間がいるのだ。
その度に何回も裏切られるのだが。
玄関のゴミ袋にしばらく目をやってからキッチンへと向かう。
冷蔵庫にはロクなものがない。中にあるのは飲みかけのお茶と、タッパーに入った肉じゃがだ。どちらもいつから置いてあったものか覚えていない。仮に覚えていたとしても何度も何度も同じ過ちを繰り返してきたのだ、食べる気は起きない。
買い溜めておいたカップラーメンを手に取る。やはり今日の朝食はお前しかいない。湯を沸かしている間に着替えを済ませる。ここまでで体を起こしてから10分も経っていないだろう。特に問題なく9時30分に外出できるだろう。
そんな事を思案していると湯が沸いたようだ。やはり湯が沸く前に着替えを済ませる事ができない。手際の悪さと湯沸かし技術の進歩は勝負にならない。
湯を入れてから出来上がるまでの間に荷物をまとめる。やっと朝食が始まる。
何故か冷蔵庫に入っている冷えた割り箸を取り出して麺を啜る。
この辛さは朝食向きではないが、美味しいのだから仕方がない。唯一の懸念は昼食前の花摘みで尻が悲鳴を上げる事くらいだ。
尻には悪いが今この瞬間の喜びを優先させてもらう。
スープと残りの微量の具を飲み込んで合掌。すぐに玄関へ向かう。
容器はテーブルへ置いたまま、服は脱いだままで家を飛び出した。
片付けは明日になったらやってしまおう。
さて、今日はどんな一日なのだろう。
角ばらない世界 ばば @nunel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます