白い死神
千手 幸村
プロローグ 暗殺者は命を落とす
コンクリートの地面に顔が当たり冷たい。その冷たさが俺に倒れてしまったことを教えてくれる。
周りには黒服を着た、いかにも闇の世界の人といった方々が俺に自動拳銃を向けを包囲している。
(俺は失敗したのか)
幼少期のころから、暗殺術を叩きこまれた俺は雇用主の命令のままに殺しをおこなう暗殺者だった。
早くに両親が他界した俺は弟を養うため、暗殺をこれまでやってきた。全ては弟の為に。弟は生まれながらに病を患っており、どこの医者に見せても治らない不治の病だった。だが、弟と同じ症状の病気を治した名医のニュースを見た。これだと思った。その名医のことのついてすぐに調べ治してもらおうとしたが治療費には莫大な金額が必要だった。それこそ人生遊んで暮らせる程の金額が。
お金が貯まったころには弟が死んでましたでは笑えない。そのため無理をして殺しの依頼を沢山受けた。
その結果が今だ。心も体もボロボロだ。
(諦めない……絶対に!)
もう虫の息である俺の体に力が漲る。
この依頼さえ終ればお金は貯まり弟を助けられる。そう思えばまだまだ頑張れた。
黒服の人は自動拳銃で俺を撃ち殺そうと発砲してくる当たらない。俺が特殊な歩法で動き回るせいだ。そもそも動き回る物体に当てるのは難しい。その上で不規則に曲がる進行方向、不規則な緩急をつけた動きをするせいで余計に当てづらい。
そのまま距離を詰めて一人一人、確実に殺してく。
時には首元の頸動脈を斬り、時には心臓を一刺し。幼少のころから暗殺を叩きこまれた俺は相手の急所を鋭利に的確についていく。
「ばっ、化け物があぁ!」
最後の一人を脳天に潰し、依頼は完了する。
(これで……やっと……助けられる)
俺は再び冷たく固い床に倒れる。血を流し過ぎたせいか、体に力が入らない。
よく見ると自身の周りは雨が降った後の水溜まりのような血溜まりができていた。
(そっか…最後の奴が撃った弾が……当たってたのか)
腹には穴が開いており、そこから勢いが止まることなく血が出続けている。
急速に体温が下がっていく。
俺が死んだら俺の財産は弟の口座に振り込まれるように手回しは済んでいる。これで心配することは無くなった。これで弟は助かると。
心残りは助かった弟の姿が見えないことだ。
人を殺して金を稼ぐ、俺見たいなクズは死に場所を選べない。人を殺しているんだ。人に殺される覚悟はあった。
(じゃな……俺の……分まで元気……に暮らせよ……)
弟に届くはずのない言葉を最後に俺は静かに眠りについた。
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