世界びっくり疑?事録スペシャル

松長良樹

脱炭素社会


 ――総理による重大な発表


 世界的な脱炭素社会の動向を受けてS総理はこの度、我が国は2050年までにCO2排出量を実質0にすると明言した。


 但し、この実質0の意味合いを考察するとCO2排出が全くなされないという意味ではなく、排出されたCO2を浄化していくと意味も当然含まれる。


 そしてその浄化方法の一つに人体に樹木の細胞を混入して、CO2で呼吸する人間を作り出そうという研究が密かに行われていたことが、この度当局の捜査により明らかになった。

 この驚くべき研究実態は旧日本陸軍研究所を母体にする組織が地下に未だ存在し、その研究室内で極秘裏に行われていたらしい。


 研究していた科学者リストは既に闇に葬られているそうだが、この研究室に密かに潜入捜査した研究員によると、樹木の細胞を混入された人達はかなり高齢の人であったらしいが皆一様に背が高く、肌は緑で礼儀正しい人達だったという。


 彼らが同室内にいるだけで空気を驚くほど新鮮に感じたと研究員は証言している。空気清浄機というものがあるが、彼らは空気清浄人間と言ったところだろうか?


 だが残念なことに彼らはその実験が開始されてから間もなく意識を失い、ベッドに横たわったままとなった。調査に依ると未知の細菌が彼らの細胞内で悪さを始めたらしいことが報告書として挙がっている。

 世論に彼らの安否を気遣う声も多いが、このままでいくと文字通り彼らが植物人間となってしまうのも時間の問題のようだ。





                了



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