第15話 開墾

「ここにするのか?」


「はい。とりあえず今日は、木を伐採して、平地にしようかと思います。できることからやっていこうですかね」


【ブログネタメモ帳】

・街づくり ~開墾編~


「私たちは何をするのでしょうか?」


ロキがおっさんに尋ねてくる。


「では、皆さんに指示をします。ロキとパメラはしゃべる鎧さんと特訓を。セリムは宮廷魔術師から習った魔力アップの瞑想を」


「俺たちは訓練ってことだな」


セリムが答える。


(武術大会まで3カ月しかないからな。訓練も大事だが、その間王都でまったりするくらいなら街を作って、ブログネタ作っていかないとな!街もブログネタも自分で作るもの)


どうやらおっさんは、ロキ達の訓練と並行して、開墾することも、獣王国に行くために必要な準備であると思ったようだ。


「はい、開墾組は私とイリーナとソドンです。イリーナとソドンは、私が木を切り倒すので、木を丸太に変えて一か所にまとめてください。川の側から始めてください」


「うむ」


「そして、コルネは訓練をしている人の警護です。河原に土魔法で高台を作るので、そこから弓でモンスターを射ってください。これは、このあたりのモンスターは、何がいるかの調査も含まれていますので、全方位の警護で大変かと思いますがよろしくお願いします」


「はい!」


コルネが大変な仕事を任されて元気よく返事をするのだ。


「おっとその前に、食事にしましょうか」


現在ちょうどお昼である。

朝8時頃出発し、4時間召喚獣に乗っていたのだ。

おっさんは何もない空間に手を突っ込むのだ。

すると、皆の武器や食料が何もない空間から出てくるのである。


(ふむふむ、昨日手に入れた四次元収納は便利だな。しかし、完ぺきではないと。だが、やはり召喚獣移動にはこのスキルは欠かせないようだな)


おっさんは、昨日異世界に戻ってきた後、四次元収納のスキルについて、分析をしていたのだ。


【ブログネタメモ帳】

・四次元収納 ~容量が小さい件について~


昨日までの分析で分かったこと

・容量の大きさは2mの立方体くらい

・触れてないと収納できない

・重さは関係ない

・生き物は収納できない

・野菜などの生ものは収納できる

・頭の中で収納のイメージができる

・消費魔力は1回の出し入れで200(魔力消費低減で80)


薪と石を集めて、イリーナがスープを作る準備をするようだ。

水はおっさんの水魔法。

薪は荷物になるので持ってこなかったので、近くから拾ってくるのだ。

河原のちょうどいい石を使って、かまどを作る。

完全なアウトドアである。


(四次元収納はスーパーの買い物かごに商品を詰める感覚だな。大きさや配置を頭の中で調整しながら、綺麗に詰めていくと。6個入りのトイレットペーパーが買い物かごに入らないことが分かるくらい頭の中でイメージができる。出す時は、出したいものを頭の中で触れて、目の前に出すと)


ロキを除く5人分の武器盾を入れると、他の荷物はほとんど入れる余裕がないのである。

武器防具があるため、7人分の食料を2日分かそこらしか入らないのだ。

なお、ロキの槍は2m以上あるので、四次元収納には入らず手持ちである。

おっさんの武器は解体用の短剣である。

ソドンのハルバートは重く荷物にもなるので、今回は持ってきていないのだ。

ソドンも今回は剣を装備しているのだ。

オリハルコン製の剣である。


(これは頑張って四次元収納を先にレベル2にするか。今よりはましになるだろう。でも必要AS10万ポイントか。足りぬ。ブログネタが足りぬぞ)


・四次元収納Lv2 100000ポイント


そんなことを考えながら、昼食を食べるおっさんである。

荷物になるので、イリーナ特製スープ以外は調理不要なパンと干し肉であるのだ。

食事が終わったので、各自行動を開始するのだ。


「エアプレッシャー」


4枚の10mを超える風の刃が地面すれすれを走るのだ。

地響きをたて、木が倒れていく。


(ふむ、現実世界では、この数千年、人類はこうやって住む場所を広げていったのか。日本だと開墾や開拓が進んで、平地の森はかなり少ないらしいな。欧州だとまだ平地の森が残っているとか。異世界ものだと森に街を作る話より、荒野に街を作る方が多いな)


森を開拓して住むようになった現実世界の歴史に思いをはせるおっさんである。

そして、よく読んだ異世界ものの街づくりについても思考するのである。


風魔法Lv3でがんがん木を伐採していく。

仲間支援魔法で知力4500を超えるおっさんの風魔法の刃は、大木を切った後そのまま直進し、その先の木や岩などの盛り上がりまで切り、それでも止まらず進んでいくのである。

今回は仲間支援魔法をフルにかけているのだ。

イリーナは剣を使って枝切って丸太にしていく。

力が支援魔法で4倍になったソドンが倒れた木を運ぶようだ。

今後の建材にするためだ。

なお、おっさんの魔法の方がはるかに速いため、倒れた木が地面に一気に広がっていくのだ。


(魔法レベル3だと、発動時間ほとんどないな。発動時間があると意識したのは、攻撃魔法も回復魔法もレベル4からだな。魔法陣が発生するからかな)


ちらりと訓練をするロキを見るおっさんである。

仲間支援魔法でフルパッシブ、オリハルコンの槍を持った本気のロキをボコボコに揉むしゃべる鎧だ。

これでもまだ本気ではないようである。

手加減をしているようにすら見えるのだ。


(さすが、Sランクだな。ようやくAランクを1人で倒せるようになったロキでは力不足か。仲間支援魔法で力が2000を超えてるんだけどな)


その日は夕方近くまで開墾したおっさんであった。


「ずいぶん、綺麗になりましたね。まだ川の要塞側だけですが」


要塞、トトカナ方面なので、川の東側の木を伐採したのだ。

イリーナとソドンでは、万を超える木を半日で整理することなどできぬのである。

もちろん木の根っこもそのままなのだ。


訓練をしている河原まで戻るおっさんである。

そこで見たのは、過去に何度か見た、力尽きたロキである。

体が呼吸で僅かに動いているため死んではいないようだ。

出血はしていないが、今回も全身打ち身であざだらけである。

その近くで地に伏すパメラである。


そして、その近くで静かに座禅を組むセリムである。

魔力の上昇の訓練中である。

何でも体の魔力を静かに感じることが大事とのことだ。

おっさんが、伐採している間もほとんど動かないのである。


(セリムは相変わらず努力の人間だな)


剣も魔法も才能のないため、武に学問に努力をしてきたセリムである。

伯爵になり、Aランク冒険者になった今でも、そのやり方は変えないようだ。


イリーナが夕食のスープを作るようである。

スープ用の水を水魔法で用意するおっさんである。


(さて、どんなモンスターがいるかな)


高台で警戒中のコルネに声をかけるおっさんである。

どんなモンスターがいたか確認するのだ。

おっさんは、土壁を作ってモンスターを寄せ付けないこともできたのだ。

しかし、このあたり一帯にどの程度のモンスターがいるかも確認が必要であったため、コルネに倒してもらっていたのであった。


(ふむふむ、オークやオーガかトロルもいるな。初トロルだな。初トロルってなんだ?ただ、数としてはそこまでいないか。寄ってくるモンスターのみ倒しただけだからな。主にBランクとCランクがこの辺に出るのか。Dランクのコボルトやゴブリンはいないと)


コルネからの報告を受けるおっさんである。



イリーナ特製スープと干し肉とパンを食べるおっさんらである。

皆で食事するため、土魔法で周りの壁を作成するのだ。


「これからどうするんだ?」


「そうですね。せっかく領都にしたい場所も見つかったことだし、このままここで街づくりがしたいですね。武術大会が始まる少し前まででしょうかね。ロキとパメラは武術大会に備えてここで特訓ですね」


「ふむ、そうだな」


皆も特に異論がないようである。

ここは何もない場所であるが、王都は不自由しないが、ここ最近長くいたので、退屈であったのだ。

街づくりというやることができたほうがいいようである。

イリーナやコルネはおっさんがいるところならどこでもいいようだ。

ロキとパメラは支援魔法を使い全力を出すことができ、回りを気にせず戦えるのでここの方がいいとのことである。


「その上で、明日はアヒム、イグニル、アリッサを王都から連れてきたいと思います。開墾に人手が要りますからね。あとは食料の買い込みでしょうか。セリムは私と王都へ。残りの方はこちらで待っててください」


明日はロキとパメラの訓練休息日であるのだ。

この日セリムは、ロキとパメラのためにしゃべる鎧の召喚不要であるのだ。


(さすがに、大会前の食事が干し肉ではな。栄養も大事だな。3日に1日、ロキ達の休息日に王都やフェステルの街に買い出しにいくかな。あとは、今日は伐採に時間をかけてしまったから、明日は新魔法の実験だな)


おっさんは、食事が終わると、明日やることを考えながら、川の側に風呂を作るのだ。

肉体労働と訓練をした人たちのためである。

魔力調整スキルと土魔法を駆使して、大きな風呂桶と、土壁で作った風呂小屋を作成するのだ。


ついでに寝床の簡易小屋も土魔法で作るおっさんである。

何棟か川沿いに作るのだ。

イリーナから私達の小屋は少し皆から離そうと言われるおっさんである。

黙って言われた通りにするおっさんである。

なぜかは聞かないのだ。

毛布も何もない土壁の床に眠る皆である。

開拓地に必要なものがどんどん思いつくのだ。



そして翌日である。

皆を残して、セリムと出発するおっさんである。

王都にはセピラス1体である。

武器防具もない2人のため、時速240kmで飛んでいくのだ。

240kmの速度を体感するのも目的の一つだ。


ロキとパメラは肉体の回復に専念するようにと、特にロキに伝えるおっさんである。

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