第22話 ダンジョンとスキルの検証

焦げ茶色の土壁の中を進む4人である。

腰に括り付けた魔道具の灯りがダンジョン内を照らしている。


(通路も結構な広さだな。4人横一列に並んでも問題ないくらいか。広くていいが、後方職守りたいなら、もう少し狭い方がいいか。とりあえずまっすぐ2階を目指すか。なんだろう確かに薄暗いが真っ暗というほどではないな)


ダンジョンの中について考察をすすめる。

隊列は前方横1列にイリーナとロキ、真ん中にコルネ、後方におっさんである。


「コルネ、私はそれほど遠くまでの索敵できません。できるだけ遠くの索敵をお願いします」


(ふむ、これでコルネの鷹の目のスキルレベルが成長すれば、使用頻度によってスキルが成長するか分かるな。推察では使用頻度とレベルの両方で上がると思うのだがその辺もチェックだな)


「はい!」


ツルツルに硬い土壁の道の感触を足で感じ、おっさんは思うのである。


「これだけ、硬く滑らかな道なら確かに台車で荷物を引いた方がよさそうですね」


「はい、そうですね。戻ったら買いに行きましょう」


ロキも賛成のようだ。


「えっと、ここで支援魔法の効果を確認します。スキルを懸けますので何か変わった感じがあったら教えてください」


「はい!」


コルネが元気よく返事をする。

支援魔法を全種類かけていくおっさんである。

当然経験値上昇のスキルも発動するのだ。


(ステータスが2倍になったな。さすがスキルポイント100から始まる上昇効果といったところか。そして複数の効果は当然重なると)


「ふむ、何かすごい力が湧いてくるぞ」

「頑丈になったような気がします」

「素早く動けそうです!」


「ありがとうございます。体感できる程度に効果があるようですね」


【ブログネタメモ帳】

ウガルダンジョン攻略に向けて ~1階探査編~


「ん、この角の先からモンスターが3体やってきますね。警戒を」


20分ほど少年から買った地図で歩いていると、おっさんが事前にいっていたとおり、前をゴブリンが3体出てくる。

剣と槍を構えるイリーナとロキである。

すると後方から3本の矢がゴブリンの頭を射抜いていく。


(ふむ、倒したモンスターがでるが、どのモンスターかまでは分からないと。地図にでるモンスターの表示を具体的なモンスター名で切り替える必要があるのか。って、経験値が入ったぞ)


タブレットの『地図』機能はターゲットを赤点で表示ができる。

ターゲットはおっさんの意識次第に切り替わるのだ。

しかし、ターゲットの意識を『モンスター』にすればモンスター全て『地図』に表示される。

ターゲットの意識を『ゴブリン』とすればモンスターの中からゴブリンのみが表示されるのだ。

このターゲットの区分の切り替えはおっさんの意識1つで変わるのである。


また、経験値であるが、戦闘に参加したもののみに経験値が入る仕組みだ。

戦闘に参加した者達で均等割が基本である。

戦闘に参加するとは、攻撃をする、または回復をするなど戦闘に貢献すればなんでもいいのである。

そして、今おっさんはタブレットを見ているだけで何もしていないのだ。

よって経験値は入るはずがないのである。


(ふむふむ、もしかしてこれが仲間機能の特典か。ただ、皆のレベルをある程度上げるまで、経験値いらなかったのだが。特典も場合に寄りけりか)


おっさんは3人のレベル上げに専念する予定であったのだ。

ロキがゴブリンに近づき弓矢を抜くようだ。

そして短剣を取り出す。


「すいません、ロキ」


「え?はい、従者がいないので私が素材の解体をしますよ」


「ありがとうございます、しかし素材の回収は不要です」


「え?」


何だという顔をするおっさん以外の3人である。


「DランクとEランクのモンスターの素材回収は不要です。銅貨や銀貨を稼ぎにここにきているわけではありません。素材回収はCランク以上でお願いします。時間が勿体ないのです」


「時間が勿体ないですか?」


「そうです。銅貨や銀貨を回収する時間があれば、BランクやAランクのある階層を目指すべきです。もちろん今回は1泊のつもりなので、Bランクのモンスターは狩らないのですが、ダンジョンの分析に時間的原資をつぎ込みましょう」


そうですかと素材の回収をやめるロキである。

ここで数十体の素材を回収するより、下層の1体の素材の方が数十倍になると説明するおっさんであった。


(ふむ経験値が9入ったな。これはゴブリンの経験値は5だったから、4人で割って小数点は切り上げか。それが3匹だったから3の3倍の9なのか。まじか経験値3倍くれるのか)


経験値の分析も進めるおっさんである。


(あとは持続時間だな)


発動時にタブレットの『時計』機能で時間を計測中である。

おっさんら一行は前に進んでいくのであった。

モンスターを狩りながら進む一行である

そして2時間が経過する。


「お、下の階に行けそうですね」


タブレットの地図機能が下の階のマークを表示したのだ。

青い逆三角の表示が、地図の端に表示されたのだ。


「本当か、まだ見えないが」


「この先の角です」


(青い点だな、次のエリアを指し示してくれているようだな。これは助かるな。50m以内に近づけば次の階層への入り口を表示してくれるのか)


そして、下の階にいくスロープが見えてくる。


「おお!下の階だな。結構早く下の階に行けそうだな」


「そうですね、たしか、1~9階はたしかEやDランク冒険者向けらしいので早めに抜けたかったので助かります」


冒険者ギルドの資料室で難易度について調査していたおっさんである。

・1~9階はDランク向け冒険者

・10~19階はDCランク向け冒険者

・20~29階はCランク向け冒険者

・30~39階はCBランク向け冒険者

・40~49階はBランク向け冒険者

・50階以降はBAランク冒険者


なぜ1~10階という区切りではないかというと10階にはワープゲート前の広間に、ボスがいるからである。

よって10階単位でボスの広間とワープゲートのみの広間があるのだ。

他のボスの広間のない階層は、ワープゲートのない広間のみである。


おっさんらは下の階にいくと、ワープゲートはないが簡単な広間になっているようだ。何組かの冒険者が散らばってそれぞれごとの塊になって休憩をしているようだ。


「少し休憩したらまた先に進みましょうか」


軽く座り、この2時間で分かったことを整理するおっさんである


【ブログネタメモ帳】

・ダンジョン攻略に向けて

・ダンジョンの記録 ~1層から9層編~

・地図機能とダンジョン攻略 

・経験値取得倍増の効果検証

・仲間支援魔法の効果検証

・魔力回復加速の効果検証


(検証することが多すぎてワクワクが止まらんな。戻ったらブログまた起こしちゃうんだからね。だけど、まだモンスターが弱すぎて分からない部分も多いな。行きと帰りでなるべく完成させたいぜ)


おっさんが分析すると


「あ、あの…」


「ん?ロキなんですか?」


「ケイタ様はずいぶんダンジョンに詳しいみたいですね…」


「まあ、そうですね、皆さんよりは詳しいかもしれませんが、知らないことも多いですよ。いろいろな形式のダンジョンを知っているといったことでしょうか」


「そうなんですね、ほかにはどんなダンジョンがあるんですか?」


「例えば、時間になったら消滅するダンジョン、岩が転がってくるダンジョン、毎回入るとダンジョンの形が変わるダンジョン、巻物が落ちていて使うと魔法が使えるダンジョン、奥にボスがいるダンジョンなどでしょうか」


昔1000回遊べると謳ったダンジョン攻略ゲームを本当に1000回以上遊んだおっさんである。

RPG同様にダンジョン系のゲームを学生時代にやり込んだのであった。


「すごくたくさん知っているのですね。ダンジョンに入ったことがあるということですか?」


「まあ、夢の中での話ですよ。ダンジョンに入るのは初めてですね」


「そうなんですね。なんかはじめてな気がしなくて、すごく頼もしいです」


「まあ夢の中での話ですけどね。さて休憩もそろそろいいでしょうかね。先を行きましょう」


そして、1階と同じダンジョンが2階も続いていく。


「2階も少年から買った地図のとおりですね。そしてダンジョンの様式も同じ感じと」


「うむ、そのようだな。これなら5階までは比較的に簡単に行けそうだな」


「はい、地図の大きさからも2階も1刻程度(2時間)で下の階にいけそうです。できれば4階くらいを目指しましょうか。モンスターが変わるか知りたいです」


2階も1階どうよう、ゴブリンとコボルトしか出てこないようだ。たまにスライムも見かける。冒険者ギルドでスライムは屍骸しか襲わないとのことである。

スライムはダンジョンの清掃係なので、倒さないようと言われたおっさんである。


(2階も思った通り安全と、経験値も少ないし検証が今日の行き帰りである程度分かれば、次は10階を目指すか。40階くらいまではサクサク行きたいしな)


それから4時間経過して、4階入り口の広間に着く4人である。

ここにも何組か冒険者はいるのだ。


「今日はこれくらいにしましょう。明日は帰りですね」


そう言って荷物を出し、野営の準備を皆でする。


「コルネさんはすごいですね。出てきた瞬間100発100中ですね」

「うむ、殆どやることがなかったぞ」


コルネを褒めるロキである。


「いえいえ、ありがとうございます」


コルネも嬉しそうだ。


「さて、食事用の水を準備します」


皆も別々に野営の準備や夜食の準備中である。

横に寝かした土魔法Lv1を地面に引く。

レベル1の土魔法でも厚さ1m大きさ5m四方あるのだ。

地面にめり込む形で高さ1.5m程度の蓋のない箱を作成する


「ウォーターボール」


おっさんは水魔法Lv1を土魔法で作った四角箱の上で使う。

直径1mを超えた水の塊が発生する。

初めて使った火魔法の大きさは30cmほどであることを思い出すのだ。

どこも狙わなかったので、箱の中に自然落下して箱の中に水が貯まる。


(ふむ、レベル1でこの大きさか。よし次は知力上昇の支援魔法を使ってみるか)


知力支援魔法(仲間)Lv1の効果が切れていることをステータスを見て確認するおっさんである。

知力支援魔法(仲間)Lv1を使い、タブレットでステータスを確認するおっさんである。


(よしINTが2倍になったな)


「ウォーターボール」


2m近い水の塊が発生する。

他のグループも何事だという顔をするのだ。


(まじか、直径2m超えるってことは4000ℓかよ。確か風呂ですら300ℓも使わなかったような。つうか土魔法もそうだが、INTが高すぎて生活魔法としては不便だな。戦闘以外に生活にも使うし、魔力を手加減したり調整するみたいなスキルがないか今度探しておくか)


水魔法Lv1を何度か使い、水を箱に貯めていく。

加減することを真剣に考えるおっさんである。


「水の準備が出来ました」


後ろを振り向くと、3人とも固まっているのだ。

周りにいた他のグループも凝視しているのである。


その後、何事もなかったかのように夕食を済ませ夜番をするのである。


「たしか、ワープゲート以外の階が始まる広間では、確かモンスターがやってくることがあるといっていましたね。他の冒険者もしますし、夜番しましょう。順番はどうしましょうか」


と言い出すロキである。


「そうですね。私も特に魔力つかわなかったので4人で夜番をしましょうか」


「いいのですか?」


「もちろんです。ちょっと確認したいスキルもありますしね」


そういっておっさんのダンジョン初日は終わったのであった。

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