第19話 アフェリエイター
ここは1k8畳の賃貸マンションの一室である。
結局、物件を借りた日は、すぐに必要なベッドなどの家具の購入など住むことに追われたので冒険者ギルドには行かなかった。
気が利くロキが従者と侍女に陣頭指揮を執っていたのだ。
「まあ、フェステルの街から従者に侍女を連れてきて良かったな。あんな大きい建物の管理はさすがに面倒だぞ」
おっさんは現実世界に一度戻って物件を借りたところまでのブログを起こしていたようだ。
王都編
第51記事目 ドラゴンステーキパーティー
第52記事目 魔力回復加速検証
ダンジョン都市編
第53記事目 貴族とステータスの関係
第54記事目 ウガルダンジョン都市とは
第54記事目 ウガルダンジョン都市の人口動態 ~神秘の獣人再び~
第56記事目 ウガルダンジョン都市の食生活
第57記事目 ダンジョン都市で一軒家借りてみた
「ASポイント貯まってきたな。まあダンジョンに行くまで取っておくかな。どれから必要になりそうなのかはどんなダンジョンかを調べてからでいいだろう」
PV:27619
AS:2220
「あとはこれだな。スキルレベルはいくつまであるか分らんが、レベル5で終わりなら、スキルポイント1攻撃魔法より威力が期待できる、攻撃魔法も今後検討していかないといけないな。ダンジョンだとアンデット系も多いだろうしな」
・神聖魔法Lv1 100ポイント
・暗黒魔法Lv1 100ポイント
おっさんはウガルダンジョン都市までの道中にいくつか気になる攻撃魔法をメモ機能に残していたようだ。
「さてと、ブログも起こしたし異世界に帰るか」
検索神サイトの扉画面を開く。
『ブログ記事の投稿が確認できました。異世界にいきますか はい いいえ』
おっさんは『はい』をクリックすると、ふっと目の前の風景がウガルダンジョン都市で借りた一軒家のおっさんの一室に飛ぶ。
(さてと、ただいま)
おっさんは急ぎで買ってきたベッドに座っているようだ。
「ん?どうしたのだ?起きてしまったのか」
ベッドにはイリーナがいるのだ。
おっさんの部屋に無言で入ってきてそのままベッドで寝たイリーナである。
神への報告準備を気にして、おっさんには話しかけなかったのだ。
モテない歴35年のおっさんもここまでされ、うれしかったので、何も言わずイリーナを迎え入れたのだ。
そして、あまり無碍に接するのは良くないなと反省するおっさんであった。
「ああ、そうですね、もう寝ようかなと」
「そうか、おやすみケイタ」
今はまだ家を借りた当日の夜である。
おっさんの部屋は3階突き当りの1番大きな部屋である。
イリーナの部屋はおっさんのとなりである。
部屋割りを決めたのだが、おっさんと女性陣は3階である。
男性陣は2階の部屋になったのだ。
なお、2階は10室あり、3階は6室ある。
これはロキが女性陣と男性陣は風紀的に分けたほうがいいのではと言ったらこうなったのである。
帯同した従者と侍女は20歳前後と若かったため、何かあったときのために配慮をした形だったのだ。
イリーナを見て俺が一番風紀を乱してしまっているなと思うおっさんであった。
朝8時みんなで食事を取る。
「今日も昨日に引き続き、家具の購入や清掃などをしておくように」
「「はい」」
ロキが従者と侍女に指示をしているようだ。
食事を終えると、馬車の準備ができている。
この家は、ダンジョンまで歩いて30分程度であるが、冒険者ギルドまで歩くと1時間ほどかかる。
そのため馬車で行くのだ。
馬車で揺られること20分、9時ごろには冒険者ギルドに着いた。
「さて、イリーナの冒険者証を作りましょう。ロキのもですね」
結局ロキも冒険者証を作ることにしたのだ。
これで全員冒険者証を作ることになる。
冒険者ギルドの中に入るおっさんら一行である。
混雑時間帯を避けたため、比較的建物内は空いているようだ。
ウサギ耳の受付嬢のいる受付カウンターに並ぶ一行である。
すぐに順番が来るので用件を伝える。
「この2人の冒険者申請です。それと私達のクラン結成申請です」
要件を伝えるおっさんである。
ロキもおっさんがこういうことはしたいのだと思って黙っているようだ。
「畏まりました、武器は剣と槍でしょうか?」
「はい、そうです。残りの人も見学してよろしいですか?」
「もちろんです。試験会場にご案内します」
ウサギ耳の受付嬢についていき、併設された試験会場に向かう。
付いていくと、試験会場の中の、剣と槍の試験用のカカシの前を案内される。
「では、まず、剣でこのカカシを切ってください」
「うむ、私からだな」
おっさんに買ってもらった剣を上段に構える。
「はぁ!!」
剣はカカシを真っ二つに切り裂く。
「素晴らしい威力です。かなり丈夫なカカシなのですが、試験で2つに切ったのは久々です。Dランクの冒険者で問題ないでしょう」
「ふむ、これは剣がいいからな」
というイリーナである。
「次は、こちらのカカシを槍で攻撃してください」
「はい」
これは自前の槍で攻撃するようだ。
「は!!」
カカシを連続で突き刺すロキである。
しかし、イリーナと違って貫通はしないようだ。
(む、これはロキにも武器を買った方がいいか。未来の主的に)
「こちらも素晴らしい威力です。速さも申し分ないです。Dランクの冒険者で問題ないでしょう」
試験が終わったので、受付に戻って説明があるようだ。
イリーナとロキは受付嬢に言われた必要用紙の記載をしている。
「それでは、冒険者証が完成するのに時間がかかるため、クランの手続きに入ります。クランの結成は初めてでしょうか?」
「はい、初めてです」
おっさんが話を進める。
「では、ある程度知っているかもしれませんが簡単に説明をします。クランとは最小3名から結成できる冒険者の組織です。クランにもランクがあり、EからSまで存在します。
クラン結成のメリットとしましては、1つに信用がございます」
「信用ですか?」
「はい、指名依頼を出す側としても一定の組織で活動をし、組織で依頼を達成している方に依頼を出したいものです。個人に比べて組織で活動される方が依頼達成度も高いのです。また、長年組織で継続して、長年依頼を達成し続けるとさらに信用は高くなり、指名依頼を受けやすくなります」
「なるほど」
(ふむふむ、個人より法人の方が、信用力がある。会社の設立は短いより長い方が、信用力があるみたいな話か)
「しかし、デメリットとしては、特にクランリーダーはメンバーが起こした不祥事の責任を取らないといけない場合もありますので、メンバーを増やす際は十分注意してください」
(従業員の責任は社長の責任のようなものか)
メリットデメリットの説明をする受付嬢である。
「分かりました、私がリーダーでクランの結成をお願いします」
「承りました。リーダーの冒険者証をお出し願いますか?またクランメンバーに入る方の冒険者証の提出もお願いします。作成している方もクランに入るということでよろしいでしょうか?あと、こちらの用紙にクラン名の記載をお願いします」
「はい、今作成している者はクランメンバーに入ります」
おっさんとコルネは冒険者証を提出する。
おっさんは決めておいたクラン名を用紙に記載し受付嬢に渡す。
「承りました。クラン名は『アフェリエイター』ですね」
受付嬢は奥に冒険者証と申請用紙を持っていくようだ。
「はい」
「カッコいい名前ですね!」
「良い名前かと思います」
コルネとロキが反応する。
「ア、アフェリエイター…」
イリーナが動揺する
やはりおっさんは神の使徒だと思うのであった。
すぐに受付嬢が戻ってくる。
「皆さん、ダンジョンは初めてということでよろしいでしょうか?」
「え?初めてといいましたか?」
「今冒険者証を確認させていただきましたが、ダンジョンに入った記録がありませんでした」
(そういえば、冒険者証ってランクしか表示がないのに、個人を特定しているな。飛竜のときも冒険者証を見せただけで俺って分かったな)
王都で飛竜を持ってきた際のことを思い出すおっさんである。
「そうです。冒険者証でそういうことも分かるんですね。それは魔道具か何かなんですか?」
「はい、魔道具ギルドとの契約につき詳しくは説明できませんが、個人の特定する情報が入っております。またどのダンジョンの何階までは行ったか記録されます」
(ふむふむ、今の話だと、冒険者証に入っているのは、用紙に記載した説明事項のみかな。あとはダンジョンと冒険者証で情報が共有されているってところか)
受付嬢の話を受けて、冒険者証の情報や機能について考えるおっさんである。
「なるほど、では詳しくは聞かないようにします。ダンジョンは初めてなのですが、説明をしていただけたりといったことはあるのですか?」
(初めてか聞いたんだから、何か教えてくれるんかな?)
「はい、詳しくは2階の資料室をご確認ください。簡単にですが、ウガルダンジョン都市のダンジョンについて説明をします」
受付嬢がダンジョンについて説明をしてくれる。
要約してまとめるおっさんである。
【ブログネタメモ帳】
ダンジョンと冒険者証
・ダンジョンは地下に降りるタイプである
・地下何階まであるかは不明
・現在地下56階まである
・10階おきにボスが出る
・ボスの間の先にワープゲートを設置してある
・ワープゲートは地上とつながっているので帰還が可能
・地上のワープゲートから10階単位で地下にもぐることも可能
・一緒に降りるメンバーの中でいったことのある一番浅い階層までしかいけない
・ダンジョンに入る際は必ず冒険者証を携帯すること
・ダンジョン内のワープゲート周辺は安全地帯
(ふむふむ、結構詳しく教えてくれたな。ワープゲートのある系のダンジョンか)
「1階の広さはどの程度ですか」
「階によって違います。数刻から数日です」
「ダンジョンコアってなんですか?」
「ダンジョン最下層にあるダンジョンを管理する魔道具です」
(お、これはいい情報だな)
「ダンジョンコアを手に入れると、王家に捧げないといけないんですか」
「そうですね。ダンジョンコアが手に入ったら、王家に渡して王家で管理することになります。ダンジョンコアの詳細については資料室でご確認ください」
受付嬢はこれ以上詳しく教えてくれないようだ。
「分かりました。残りは資料室で確認します」
ほどなくすると全員分の冒険者証が出来上がった。
「大変お待たせしました、皆さまの冒険者証です。また、クラン『アフェリエイター』についても登録が完了をしております。なお、規定につき、ケイタ様は冒険者ランクBのようですが、クランランクはEからお願いします」
(ふむふむ、個人の信用と、組織の信用は違うということだな)
カンターから離れ、4人でこれからについて話し合う。
時刻はお昼頃だ。
「さて、冒険者証も作り、クランも結成したので、次の予定ですけど」
「はい」
「これから仲間がここにいるか確認して、お昼を食べて、資料室でダンジョンについて各自調査する。家に帰って、みんなで調べた内容を持ち寄りながら夕食にするでどうでしょう?」
「うむ、そうだな、何事も事前調査が大事だな」
「では仲間がいるか確認します」
タブレットの『仲間』機能を起動する。
『近くにいる人を仲間にする』をタップすると、
『近くに仲間にできる人はいません』
「いないようですね」
ロキがタブレットを覗くのである。
「そうですね、今空いていますし、また様子を見て探してみましょう」
皆でお昼を食べて資料室でダンジョンについて調べるのであった。
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