第02話 ステータスオープン

ブサイクなおっさんが一人うっそうとした森にたたずんでいた。

うっそうとしているが、明るいのでこの異世界も昼間なのだろうと予想される。

一通り現状を分析したあとやるべき重要なことがあったのだ。

おっさんは丹田に力を入れ一つの言葉を発した。

大きく叫んではいけない。

今短剣すらなく何ができるかわからないのだ。

ゴブリンだのトロルだのオオカミだのがやってきてはひとたまりもないのだ。


「ステータスオープン」


必ずあると信じていた。

それが現れることを願っていた。

希望どおりに1秒と間を置かずそれは現れた。

宙に横長の四角い半透明なタブレットのようなものが浮く。


タブレットにはこう書かれていた


名前:ケイタ ヤマダ

Lv:1

AGE:35

HP:20

MP:30

STR:5

VIT:5

DEX:5

INT:15

LUC:10


アクティブ:なし

パッシブ:なし


加護:検索神の加護(極小)


EXP:0


PV:0P

AS:10P(新規登録ボーナス)


「ほう・・・」


おっさんはあたりを見回し、大きな大木を見上げ、何も木の上にいないことを確認した後、大木を背にする。

おっさんはどうも社会の中で35年も生きていたのでずいぶん慎重になっているようだ。

世間の厳しさも異世界の厳しさも知っているのであろう。

半透明のタブレットはおっさんが動くと自然におっさんの前面になるように動いた。

数字を見つめるおっさん。


「こんなものがでてきたのだから、異世界に来ることができたとみて間違いはないか」


さらに文字や数字の意味を知りたいのだが、どこにも検索ボタンも、情報の詳細を知らせてくれる機能はない。

画面を一通り確認すると、左上にはステータスの文字がある。

右上には×印があるので閉じることができるのであろう。

ASの10の数字だけ青文字なのでタップすることができるようだ。

おっさんは宙に浮いた半透明のタブレットを眺めながら内容を心の中で確認していく。


(まず分かったことは、年齢は若くなっていないな。そのままの年齢での転移かぁ。15歳になりたかったぜ。せめて10歳は若くなってほしかったな)


(INTが高めなので後衛職なのかな。まあ剣道も格闘も人生でしたことないのでそのほうがたすかるな)


ステータスの設定を分析するおっさんである。


(何のスキルもないのか。武器もスキルもなく異世界にくるとは結構なハード設定だな。レベルも35年生きているのに1かよ)


現状に悪態をつくおっさんである。

どうやら異世界に来た感動は遠のいてきているようだ。


(まあ常日頃から検索神に好かれるよう記事を投稿していたおれとしては、検索神の加護はふつうにうれしいかな。信仰冥利に尽きるな。どんな加護かわからないし、加護は極小だけどな)


(EXPは経験値とみて間違いないだろう。それはこの世界に経験値になる敵がいることを意味するな。次のレベルまでの必要経験値もないな。)


(PVってなんだろうな。ブロガー的にはPageView(ページビュー)のことかな。

まあ『閲覧数』のことだろうな。

じゃあ、ASはそうするとAdSense(アドセンス)のことか。すると『広告収入』ってことになるな。このあたりが、この異世界を攻略する上で大事になってきそうだな。サイトにもブログをかいて情報を提供しろってあったしな)


おっさんは異世界雑記記事サイトの個人情報を入力する前の画面を思いだす。


(もうこの画面からわかることも少ないだろうから、ASの数字か右上の×表示しかタップするところはなさそうだな)


おっさんはASの横の青文字で表示された10Pをタップする。

すると画面は切り替わり、ずらっと縦長にスキルの文字が表示される。

あいうえお順のようだが、スクロールバーがずいぶん小さいのでかなりの数のスキルが表示されているのだろう。

画面の右上に×表示がある。

その×表示の下あたりに検索画面があるな。


『暗記力向上 レベル1 必要ポイント1P』


スキル名の横に取得できるのであろうレベルが表示されている。

必要ポイント1Pのところが青文字なのでここをタップして取得するのであろう。

画面を指でスクロールすると表示されていなかった、下のスキルがどんどん表示されていく。


(ふむふむ。10Pを使ってこれでキャラ育成しろというわけだな。ほとんどのスキルが1Pか。中には必要ポイントの高いのがあるな)


画面のスクロールをしたり、検索バーで文字検索をしながら何を取得するか決めていく。


(異世界ものはずいぶん読んできたな。それが役に立つときがくるとはな。必要なものは決まっている。異世界転生には3種の神器があるのさ)


(まずは鑑定っと)


検索画面をタップすると、『検索できませんでした』の表示が出てくる。

似たような単語を使い検索してみるが『検索できませんでした』の表示が続いていく。


(終わった。ここは本当にハード設定の異世界のようだな。鑑定できないとなると情報の収集にはかなり手間取りそうだな。それに敵が出てきて戦いになってもどれだけ相手が強いのかわからないってことだ。涙出ちゃうぜ)


(気を取り直して翻訳っと)


検索画面をタップすると、『検索できませんでした』の表示が出てくる。

似たような単語を使い検索してみるが『検索できませんでした』の表示が続いていく。


(す、すぐに必要なスキルじゃないしな。それに、これはもともと言葉が通じるケースもあるしな。これ以上のハード設定はおっさんにはつらいぞ)


(最後に収納っと)


検索画面をクリックすると、『4次元収納』の表示が出てくる

しかし、必要なポイントが1万Pとある。


(はうっ。レベル1の『4次元収納』で1万Pも必要なのかよ。涙がでてくるぜ。誰か助けてくれ)


おっさんは1人森の中で苦悩の表情をする。

タブレットを出して1時間は過ぎようとする中でおっさんはスキルを選ばねばならない。


(ないものはしかたない。1Pのもので必要なものを取得していくか)

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